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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season17-9

   

 松井部長は印税についてMUROMATIの権利を守るために単独で調査をしていた。

 すると妙なファイルを手にしていた。

 愕然となった松井。それは裏帳簿だった。特にMUROMATIについて書かれている企画書でもあった。

 かなりの重鎮である名前がサインされている。それはとんでもない内容だった。

 松井は単独でそのメンバーを呼びだし詰め寄ることにした。

 もはやどうにもできないところまでMUROMATIという楽曲は世界に波紋を呼んだ。

 引くに引けなくなった上層部は嘘を本当にするため黙することにしたが、新藤の裏切りによって崖っぷちに立たされていた。

 そして松井は…

 

 J-Classic音楽事務所経理部部長の松井は、今回の作曲者と印税権利についてどう解決すべきか考えていた。使用された分の著作権料と印税の支払いについて保留のままだ。このままだとJ-Classic音楽事務所の懐にはいるばかりだ。

「J-Classic音楽事務所にはいる?」松井はこのとき脳裏に筋書きが見えた。「まさか、上層部が…」

 自分が働いているからそんなに気にとめることではないが、そもそもマスコミが連日報道し続けているせいもあり、ないがしろにはできない。

 松井は責任感ある男だ。逃げるまねはしない。ありとあらゆる資料を見て今回のときのような事例をどうにか乗り越えるためのヒントを探す。

 そんなことを単独で行動していたときだ。経理部の部長というのにまったく知り得ないファイルを見つけてしまった。

「そんな…」松井は唖然となった。裏帳簿というやつだ。

 上層部のサインがされている。世界に売れる曲を作成するシナリオを考えた企画書を発見した。

「やはり、これが原因だったんだ。経営は破綻している。その穴埋めのための資金を…データの改ざんをしているじゃないか」

 松井は企画書に記された三人の名前のもとへ詰め寄る。

 会議室に呼び出した経理部部長。

「失礼します」扉を開けるとすでに三人は玉座に座っていた。

 増島 創史(ますじま そうじ 59歳)会長。

 兜森 正峰(こもり まさみね 47歳)理事長。

 葉鳥 市角(はとり いちかど 40歳)印税管理部部長。

「なんだ、いったい?」会長は嗄れた声でいった。

「いま話題になっているMUROMATIの曲についての権利などのことです」

「それならマスコミが騒いでおるな」会長はいった。

「はい、勝手に佐脇や新藤が自己顕示欲を主張しているようなまねをして、我らにも損害をもたらしている」理事長がいった。

「それがどうかしたか?」印税管理部部長の葉鳥がいった。

 松井は睨んだ。正直になれない腐った頭の上層部の愚劣さにだ。「原因はあなたたちのせいでしょ」

 バンッと資料を叩きつける。

「なんだその態度は」会長が睨みつけた。

 仁王立ちになる松井だった。これを叩きつけることで正義感は達成された。

「あなたたちは終わりです。玉座を退いてもらう」松井はいった。

 三人は資料に目を通した。

「ほかにだれかに見せたか?」理事長が察したのかいち早く松井に詰め寄った。

「まだです。できることなら私だけの胸にとどめておきたかった。でもそれではMUROMATIという曲は生きていけない。このさきこんな終わり方で消えゆく作品であってはならない。支持してくれるファンがいる限り、私たちも支える側としていかないと…」松井はいった。

「そうか…」唇を噛みしめる会長だった。「なら…だれにもいうなよ、貴様…」

「えっ…」松井はあっ気にとられた。

「そうだな、首にされたくなければ口を噤め」と命令された。

 正義感のある松井は暗躍の次なる一手を打っていた。ここからは任せる。

 部下の安田がすでに探偵に協力を求めていたから単身無茶な行動にでたのだ。

 内部に汚辱者がいることがわかった。

「これは公表するべきことです。そうすればMUROMATIの曲がどういう形にして新スタートするかが見えてくる。新藤氏を作曲家として、協力者として佐脇氏に名義を埋める。それがこの作品の一番の形となる。われらはそれをサポートする義務もある。そうでしょ?」

「そんなことしたら責任を取るのはJ-Classic音楽事務所になってしまう。会長の私がそうなるというんだよ…きみ、わかっているのか?」理事長が問い詰める。

「上の者が責任を果たす。それはとうぜんのことです。わたしも自分の部下がミスをしたら常に責任を果たします。首覚悟で…」松井はてこでも聴かない。

「いやはや立派なものだ。上司の鑑だね」理事長がいった。「その正義感を我らのために使ってくれまいか」

「どういうことで?」

「だから…きみ、その正義感を切り捨てるんだよ。佐脇を嵌めるなりして切り捨てるんだよ」葉鳥部長がいった。「曲が売れれば使用料が入る。入った金をだれも受け取る人間がいないんだから、こちらで使用できるだろ」

「そんなことできるわけがない。あなたたちはなにを考えている。不正行為ですよ」

「真面目だけが取り柄か、金勘定に抜擢されたのはまちがいだった。融通の利く頭脳でなければ経理は支えられない」会長がいった。

「証拠はあるんだ」松井はなおも抗っている。

「きみはよくがんばった、ここを去るがいい」理事長がいった。

 扉が突如開いた。妙な男たちが入ってきて松井を引きずり出した。

「わたしを追いだしても事実は掴んだ。終わりですよ」松井は去り際まで強気だった。

「どうします?」理事長がいった。

「消せばいい」会長は簡単にいった。

 

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