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ラブストーリー

LOTUS 〜Pretty Girl〜 <前>

   

瑞穂はときどき、こんな気持ちになることがあった。瑠音が憎らしいくらいにかわいいニコニコ顔を振りまいていると、なぜだか鬱屈した気分になってしまうのだ。

LOTUS』 ―稔×瑞穂―
≪光輝*高等部1年生*5月≫

Illustration:Dite

 

 お兄ちゃんは、あたしのこと、
 「かわいい」って言ってくれるけど。
 ばかみたいに何回も言ってくれるけど。

 本当に「かわいい」のは、きっと青柳くんみたいな子。
 あーあ、あたしも、青柳くんみたいだったら良かったのに。

 中等部1年5組に在籍するツインテールの美少女・沢渡瑞穂は、クラスメイトであり共にクラス委員を務める青柳瑠音と共に、いろいろな意味で中等部の有名人だった。
 まずひとつめが、その比類なき美少女っぷり。
 規律委員会から2度に渡る発禁処分を喰らっても、地下(正確には中央校舎3号館の屋上)で慎ましくもしぶとく生き続けている「学園アイドル・ランキング」にて、初登場第3位に輝いて兄の稔を感涙させたという。ちなみに1位は初登場にしてトップに躍り出た青柳瑠音で、2位は前回からワンランク・ダウンした成田光輝。以後、数年間に渡って、この3人がランキングの上位を独占したと言われている。
 ふたつめは、その驚くべき才女っぷり。
 今年の受験で首席合格を果たした瑞穂は、入学式で新入生総代として挨拶を述べ、「かわいい上に頭もいい!」と話題になった。言うまでもないが、挨拶文は丸ごと暗記しての登壇である。真新しい制服に身を包み、小学生時代からのトレードマークでもあるツインテールに、そういえば初めて見る赤黒チェックのリボンを結んだ愛娘の姿を見て、両親は思わず目頭を熱くしたという。
 そしてみっつめが、その典型的な「ツンデレ」っぷり。
 沢渡瑞穂という少女は、一体どういう天の配剤でこうなったのか、まるでどこぞの萌え系アニメから抜け出してきたかのような、典型的な「ツンデレ」タイプだった。それもツリ目・ツインテ・優等生という無敵の三拍子が揃っているのだから、ツンデレとしては最強と言っても過言ではないだろう。「ツンデレ」の定義は多々あるが、ここでは「好きな人の前では天邪鬼」という意味で捉えたい。その傾向がより強い場合がツンデレ、弱い場合が瑠音のようなデレツンになる。
 ただし、瑞穂がツンデレ属性であることは、彼女とある程度深く付き合わなければわからなかった。中等部1年5組のなかでは、さしずめ瑠音がそれに当たるだろうか。
「そういえば沢渡さんってさ、その赤いチェックのリボン、よくつけてくるよね」
「えっ、そう?」
 朝のSHRが始まる10分前。
 上級生たちから「中等部のおひなさまセット」と呼ばれて目の保養にされている中等部1年5組のクラス委員たちは、担任の八重樫から預かったプリントを手に、仲良く渡り廊下を歩いていた。中央校舎の3号館と中等部校舎の1号館を繋ぐ渡り廊下は、広い中庭に沿って伸びているため、中庭の花壇や木々に自然と目が行く。東側には小規模ながらも美しい藤棚があり、春に遅れて咲く藤の花は、ちょうど今が盛りだった。

 

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LOTUS 〜Pretty Girl〜< 第1話第2話

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