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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第3話「新たな日々と」

   

スウェナにキールが実の子ではないと聞かされたエリザ。そこへ、島長が帰って来たとの連絡が入る。

「ルイスにも、あの時支えてくれる大人がいたのなら、少しは未来が変わっていたのだろうか」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
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新章 第3話「新たな日々と」

 

 
「う……ぃた」

 私はベッドから起き上がると、足を押さえた。突き刺すように痛みが走る。それもそのはずだ。歩くことが出来たその日の内に派手に動き回ってしまったのだから。こうして痛むのは当たり前のことだろう。

 昨晩、海辺から部屋へ送ってもらった私は、落ちるように眠りについた。そして目が覚めると、窓から朝日が差し込み、私の髪を照らしていた。

「…?」

 その時、自分の髪を見て不思議に思った。
 ――――やけに、伸びているような気がする。

 コンコン

 ノックの音。私は足から手を離した。

「あらエリザちゃん、もう起きていたのね」
「はい、おはようございます」
「ええ、おはよう」
「…?」

 いつもなら、スウェナよりもあの少年の方が早く来るのだが、その姿が見当たらない。今日はこちらへは来られないのだろうか。

「…あの、スウェナさん。キールは?」
「あの子には遅めに来るように伝えておいたわ」
「え……」

 何故そのようなことをしたのだろう。彼のいない場で、私に何か話でもあるのだろうか。それなら理解が出来る。だって、彼女もキールも今まで私に何一つ聞いてはこなかったから――――。
 どういった経緯で、私がこの島に辿り着き、どうして何も話そうとしないのかも、彼女達は聞いてはこない。私が何者なのかも、聞こうとしない。それがありがたいのも事実だが、同時に彼女達に対する疑問でもあった。

「ねえ、エリザちゃん。あなた着替えが必要よね」
「えっ…?」

 スウェナは玄関から入って来ると、どこか楽しげに部屋を見回し始めた。そして、唐突にそう言うと、私を手招いた。

「さ、突っ立っていないでこちらへ来てごらんなさい」
「…はい」
「まあ! あなた全然家具に触れていないのね……この間まで起き上がれなかったのだから、仕方のないことだけれど……」
「…………」
「好きにしていいのよ。遠慮しないで」
「……いえ、その……」

 この部屋は、一時的に貸してくれているものとばかり思っていた為、私は部屋の家具等に必要以上に手をつけていなかった。この島に長居をしていいものかどうか、判断に悩んでいるのもその理由だが。

 決まりのいい返事をしなかった私を見て、スウェナは困ったように笑った。

「この部屋はね、私が子供の頃使っていたの。当時の服もそのまま残してあるわ。だから――――……」

 彼女はクローゼットに手をかけて、開いた。そこにはハンガーにかけられた数十着の洋服がきちんとしまわれていた。私は瞬きをして、スウェナを見上げる。

「ほら、結構あるでしょう?」
「貸して下さるんですか? ありがとうございます」
「ふふっ、違うわよ。全部あなたにあげるわ。私のお古になってしまうけれど、あまり着ていないものばかりだから許してちょうだい」
「貸して頂けるだけでもありがたいです。ありがとうございます、スウェナさん」
「エリザちゃんには少し大きいかもしれないけれど、そのくらいが丁度いいわよねっ」

 スウェナは面倒がる素振りなど見せずに、ハンガーにかけられた洋服を何着か取り出すと、私の肩と腕に合わせた。
 だが、途端に彼女の笑顔に陰がかかる。

 

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