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月刊ファインドは面白くなりまくる

   

月刊漫画雑誌「ファインド」で長い間仕事をしている中堅作家、二川 敏則は、最近誌内人気の低下に悩んでいた。

自分の作品の出来が悪くなっているわけではないのに、何故か実力のある新人ばかりが登場してくるのだ。そのため二川は、新人たちの師匠であり、かつ自身も新人の頃世話になった大御所漫画家、犬島 太一のもとに趣き面白さの秘訣を学ぼうと試みるが、特にこれと言った秘訣は見つけることができなかった。

そうこうしている間にも、犬川の直弟子と見られる新人は雑誌内に増える一方で、二川はいよいよ打ち切りを言い渡される。客観的には妥当でも本人とすれば到底納得できるものではなかった。

たまらずに街に飲みに出た二川は、そこで奇妙な光景を目にする……

 

「し、下から三番目ですって! 仕事に問題はなかったし、展開だっていい盛り上がりじゃないですか! 坂井さんだって一発OKだって……!」
 プロ生活十五年を迎えようとしている中堅漫画家、二川 敏則はいつになく声を荒げていた。
 必死で描き、面白さという結果を出しているにも関わらず、急降下している誌内順位に苛立ちを隠せなくなっていたのだ。
 無論、ようやく掴んだ長期連載を手放したくない感情も強く働いている。
「ご心配なく。先生にミスはありませんし、仕事のデキも今までで一番でしょう。僕が保証しますよ」
 一方、担当編集の坂井はクールだった。
 昔から二人三脚でやっているが、決してお世辞を言わないタイプだけにコメントの信頼性は高い。
 ただ坂井は「相対的だからね」と付け加えてみせた。
「アンケートの結果は相対的、つまり相手がいることですから、予期せぬ浮き沈みはあります。雑誌そのものが面白くなっているんです。社長もこれで、来るべき電子化・立体化・フルカラー化への時間を稼げると大喜びでして」
「しかし、私はどうすればいいんでしょうか。雑誌が潰れないのは結構ですが、仕事がなくなっては仕方がない」
 二川は、見栄も外聞もなく窮状を訴えた。客観的には確かに坂井の言う通りだが、なるに任せて打ち切りを食らうのを受容することなどできなかった。
 滑り込みで掴んだ枠を活かし切り、初の長期連載にまで作品を育ててきたのである。
 もしこれで一から出直しとなれば、二度と大作家への道は開けないかも知れないのだ。
「確かに『アニマルソルトサイド』は最高ですし、描いている犬島先生も素晴らしい。いいお弟子さんが活躍しているのも分かります。しかし、私はまだ読者には戻りたくないんです……」
 二川はなおも食い下がった。かなりムチャを言っているという自覚はあったが、非常識というならこの「月刊ファインド」の状況も普通ではなかった。

 

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