幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season17-11 END

   

 御影と小柴は新藤と対峙する。そこには自信に満ちた新藤がたたずんでいた。

 コンサートをする新藤の真の狙いについて御影は問い詰めた。

 だが、なにも証拠も確証もなかった。

 探偵社のメンバーを談笑していたとき、大地がまさかのクラシックファンだと告白。

 そして御影は何気ない大地の発言から閃いた。

 新藤の奇妙な視線や態度、根本的に真相はちがっていた。新藤が内に秘めていたコンプレックスとでもいうべきことを払拭するための個人のシナリオにJ-Classic音楽事務所や佐脇、その関係者は全員踊らされていた。

 怒涛の展開、クライマックス。

「第十七シリーズ完結」

 

 新藤氏はMUROMATIが自分で作曲したことをどの番組でも公言していた。テレビ出演しては謝罪をしている。視聴者は潔くそして誠意を持っての態度に好感を抱きはじめていた。

『新藤なら印税とか作曲家の権利ってなってもいいんじゃないか』一般人の声。

『MUROMATIの本当の作曲家なら新藤がなっていいと思う。もったいないこのまま消えてしまうのは…』一般人の声。

 誇示したほうがいいという声に新藤氏は心底喜んだ。

 だが実際に聴覚障害者が作曲したMUROMATIという売りがあったから世界的に認められ広まった曲でもある。

 いまとなってはゴーストライターが作曲家として音楽家として表に出ている。

 紳士的な姿勢と温厚な人柄でテレビ番組に引っ張りだこになったのは新藤だった。

 世間に謝罪を込めて出演を許諾する新藤。もちろん出演料はもらわず。その覚悟の態度がどんどん人気が集まり、バラエティ番組にも出演しピアノの腕を披露する。

 活躍はとどまることをしらず、自身の作曲したクラシック音楽をサントリーホールで指揮するという偉業を果たした。

 まるで過去を払拭するかのような活躍。

 日の目を見たゴーストライターは、いまではその肉体をしっかりと地面に影をのばすほどの存在感を放っていた。

 ついに新藤は自身で作曲した新譜が名門レーベルから世界デビューを果たした。

「第二のMUROMATIを聴いてあげてください」

 小柴はそういわれて微笑んだ。「うんざりよ、禿げ」

「口を謹んでください、小柴さん」御影はいった。

 二人はサントリーホールを出た。そして新藤がいる控室へと向かった。

「新藤さん」控室手前の通路で御影は対面した。

「これはこれは、たしか探偵さんだったな。若いから覚えているよ」

「ずいぶんと自信に満ちた口調をなさります」御影はいった。

「そんなことは、これでもいまだに自分がしたことの過ちを悔いてます」新藤の容姿と態度、温厚そうな表情は変わりはない。

「そうですか。でもこれですべてあなたの思い通りになった」御影は目を細めた。

「どういう意味ですか?」新藤の顔から笑みが消えた。「逆境を乗り越えただけだ。世間が認めた!」

「どうしました? 感情が昂っている。はじめて見る顔だ。それとも必死で出ないように隠していたとか」御影はにやりと笑みを浮かべた。

「御影くん、下品ですよ」小柴が呈した。

 J-Classic音楽事務所の会長室でもっと下劣なことを言い放っていたのは小柴さんだ。

「あなたはJ-Classic音楽事務所からゴーストライターとして佐脇氏の代わりに作曲を依頼された。でも、抵抗はあるにもかかわらずあなたは引き受けた…それはなぜか」

「なにがいいたいお嬢さん?」新藤の眉があがった。

「いまのこの状況になるようあなたは暗躍していた」小柴はいった。

 新藤は目を細め、犯罪者のような目つきに変わった。

「証拠もなにもないくせによくもそんなことを…」

 御影と小柴は黙った。

 再び鼻で嗤い笑みが戻った。「もうよろしいかな。お客様が待っている」

 新藤は背筋を伸ばし凛々しく二人の前を通り過ぎていった。

「そうだ」新藤は振り返った。「ワールドツアーコンサート。新たな挑戦に世界を飛び回ることになった。きみたちも機会があったらきてください」

 御影は最後にいった。「あなたが日の目を見たのは多くのひとを裏切った行為を糧にしたためだ」

「だからわたしは世界を飛び回って奏でていくつもりです」

「なるほど」小柴がいった。「それで新作発表した音楽のタイトルが“贖罪”というマイナー調の深淵たるクラシック音楽ですか…」

「ええ、そうだ」新藤氏はこれまで見せたことのない笑みを浮かべた。

「わたし、その曲…だいっきらい」小柴はうんざりしたように吐き捨てた。

 大笑いした新藤だった。「そう…ですか、それは残念だ…」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
-, ,


コメントを残す

おすすめ作品