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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

あしたになれば〜中編〜

   

偶然街の中で見かけた夕実さんの後をつけていくと、彼女は風俗店の入っている雑居ビルの中へと姿を消した。薄暗い店内。僕の前に現れた夕実さん。彼女にはいったい、どんな秘密があるのだろうか……。

 

街の中で夕実さんと偶然会った。あの時、夕実さんの事がどうしても気になったのは、夕実さんと電気街とのつながりがイメージできなかったからかもしれない。徐々に怪しい雰囲気の街並みを進んで行く彼女。まさかとは思ったが、嫌な予感は的中する。彼女は風俗店で働いていたのだ。そこで稼いだお金は、いつも部屋へとやってくる、あの男のために使っているのだろうか。彼女に問いかけても、それを答えてくれる事はなかった。ただ、目にいっぱい涙を溜めるだけだった。

「ズボン、脱いでもらえますか? そのままじゃできないので……」

 両手の指先で目を擦り、涙を拭いたあと、涙声で夕実さんが言った。

「……結構です。別にそんな事をするためにここに来たわけじゃないですから……僕はただ、夕実さんが……」

「ごめんなさい。本当にあなたには関係のないことですから放っておいてください」
 鼻を啜りながら、僕から顔を背けるようにして呟く夕実さんに対し、それ以上何を言っていいのかが分からなかった。僕たちは何も言葉を交わさないまま、お互い、ずっと俯いていた。

「四番テーブル。亜佐美さん、ラッキーボーナス、スタートです」

 僕を案内してくれた、あの声の高い店員が店内放送を入れる。ラッキーボーナスって何だと思っていたら、夕実さんが僕に向かってそっと呟いた。

「時間、五分前です……延長されますか?」

 どうやら、残り時間のお知らせと、延長をどうするかを促すためのアナウンスだったようだ。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

あしたになれば〈全3話〉 第1話第2話第3話

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