見習い探偵と呼ばないで! Season18-2

 歯切れの悪い近藤編集長の依頼は、犯人が誰かしっていながら遠まわしにしている。警察にはしられずに犯人を捕まえ改心させようというのが近藤の心意気だった。

 どんな大罪人にも許せる誰かがいなければ、ひとは育たない。そのために警察ではなく探偵に依頼してきたのだ。

 だが、すでに平城出版社の下請け印刷会社が先日の昼前に事故が起きた。

 ヒューマンエラーによる爆破事故で負傷者20名と報道された。

 それは犯人からの警告だった。どうやら編集部では犯人からの警告を無視して印刷の継続を許可したのだ。そしてその後の爆発が起きた。

 これはSクラスの依頼。もはや氷室名探偵ではないと手に負えないほどの依頼だ。

 しかし御影は負けられない。そして本心からどうにかこの事件を解決したいのであれば包み隠さず話してもらいたい。

 御影たちは徐々に近藤に対して苛立ちが増していき、ついにそれぞれがひらめきに似た推理力で近藤の本心を探っていく。

 

 探偵たちはひどい依頼人がきたものだと腸煮えくり返っていた。

「なら、我々探偵の出ることではない」川上は花粉症のイラつきもあって声質がガラガラ声で喉まで荒れていた。

「警察にいった方がいいんじゃないの?」水桐が渋みの効いた男に嫌味を込めた。

「それはできない。我々はそんな曰くのある新刊を出すわけにはいかない。穏便に収めていただきたい。北萬治氏を助けだし、明日新刊を書店に並べたい。そして願わくば犯人も改心させられるようにしたいんです。だからお願いします」近藤の礼儀はその場にいる者をひれ伏すほどの迫力を持っていた。

「すでにその犯人のしたことは手遅れだ。罪を犯した。誘拐という犯罪をね。推理で追い詰め捕らえて然るべき場所で裁いてもらうのが当然だ」御影は容赦なくいった。

「わかっている。だが、きみのお爺様の著書でもあったと思う。“どれだけの大罪を犯した者にも、許せる器量を同じ人間は持つべきだ”という格言めいたこの一文に私は自分自身見つめ直したことがあります。社員が失敗するとすぐに怒鳴っていました。それでは人の成長を頭から叩くようにしてとどめてしまう。それでは伸びしろがなくなってしまう。私が潰してしまう。私の行いへのエールだと思いました。だから誘拐したという犯人にも、救えるべきところがあるなら救う。そして許せるなら許す。私はそう考えてます」近藤はどこまでもお人好しだった。

 探偵社は誰もなにもそれについて反論はなかった。御影ですら祖父の話しを持ち出されたことでなにもいえなくなった。

 たしかに祖父のしょうらんは心の広い人間だ。

 しかし、この人は知らないようだ。身内だから知っている顔というのがある。

 心の広いしょうらんのイメージは、人生が長いから高みから見た物言いを執筆にしている。これもまたひとつの格言として読者に考えてもらおうとしてだ。

 御影は思い出した。実家の庭で盆栽を育てている祖父の趣味を、誤ってひと鉢落として台無しにした。祖父はそれを咎めた。孫のしでかしたことで祖父は怒ったりはしない、と御影の考えは甘かった。

 謝罪したというのに信じられないくらい取り乱した祖父を呆然と呆れていたのを思い出した。

 近藤はそんな祖父のことをしったら再び鬼面になるのではないかと思い、バラすことはしない。信じることこそ真実だ。

 
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