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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第6話「亡国」

   

エリザがかつて愛した故郷、カーネット王国は――もうこの世のどこにも存在しなかった。

「あの国が、たった二年で亡国と化したと…?」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

新章 第6話「亡国」

 

 
 それは、想像もしていなかった現実だった。

 あの日から二年の月日が流れ、私は一人、この島で目を覚ました。アグランド――――生を望む者が流れ着く島で。

「では、シアンは…二年間も行方不明のままなのですか…?」

 二年――――決して短くはない時間だろう。
 シエロは真っ直ぐに私を見て、スウェナと頷き合う。

そうだ
「そんなッ」

 机に身を乗り出して、私はぐっと唇を噛み締めた。

 彼等は何故、私のことを責めないのだ。お前のせいだと罵る権利も、私を殺す権利だってある。それなのに、彼等は私を助けてくれた。目を覚ますかどうかもわからない他人の私を、待っていてくれたのだ。それはきっと彼等が、それでも息子が生きていると信じているからだ。

「私を……責めないのですね」
「お前はずっと、自分を責めているじゃないか」
「…!」
「そんな必要どこにもねぇのによ。それでもお前は、自分自身を変わらず責める」
「……もういいのよ? エリザちゃん」
「スウェナ、さん」

 その優しい言葉に流されそうになる。だが、どこか引っかかる。もやが段々と晴れていく感覚だ。私は何かを思い出さなくてはならない。何かを――――。

「もういいの。忘れて生きたっていいのよ
「忘れて……生きる――――……?」

 忘れて生きる。一体何を――――。

 私はそこで、ようやく問わなければいけないことを思い出した。震える指先でペンダントに触れる。熱くなってきた目頭に、私はもう少しだけ待ってくれと願った。浮かんでくるその『答え』に、私は必死で抗いたくて、目を開く。

 ――――あれは、その場で実際に眺めているような感覚だった。だが、目の前には確かに壁があって、触れ合うことも声をかけることも叶わない。それは、意識と無意識が混在し、今と過去が混ざり合い、夢と想いが溶けだして、透明の膜を張った向こう側の記憶。

 私を目覚めさせたあの夢が、二年前のルイスだというのなら、その後、彼はどうなった――――?

「兄様は――――兄様は一体どうなったの!? 彼はどこ!?」
「! 落ち着けエリザ!!」
「私の兄は、今どこに…!!」

 いや、叔父がルイスを生かしておく理由などどこにもない。幾ら考えたって、一つも思い当たらない。

「『坊っちゃん』の行方は、わからないんだ。何故なら、もう――――……」

 彼もルイスをそう呼ぶのか。エドガーやマーサと同じだ。

 

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