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スーパー目利きロボ 初代判右衛門

   

素晴らしい美術品の類は数多いが、名品が生まれると贋作が生まれるのが世の常、偽物をつかまされて財産を失ってしまう人も多いのが骨董や美術品の世界である。
そんな中、小さな古物屋に「スーパー目利きロボ 判右衛門」が登場した。店主の島田 昇一が海外で見つけてきたもので、予めインストールされた名品のデータと現物を比較し、さらに科学的分析を組み合わせるといったシステムを組み合わせることで、ほとんどの人間には不可能な鑑定精度を実現させた。さらに、機械でありながら高性能AIをフル活用し、何かと人間っぽい受け答えもできるというスグレモノである。

このニューフェイスは大人気を獲得した。判右衛門単体だけでなく、相方の島田もとにかく口がうまかったので、鑑定のみならず掛け合いまでもがもの凄い評判となり、マスメディアに引っ張りダコの存在となった。

そうなると、方々から色々な依頼が舞い込んでくる。中には、とある企業家からの、表沙汰にしないことを条件に鑑定してくれという仕事もあり……

 

「ホホウ、コレハナカナカイイ品物デスナ。江戸期ノ民芸品デショウ……」
「……残念ナガラ贋作デス。シカシ、製作者ノ腕ガトテモ良イ。将来的ニハ真作トシテ価値ガデルカモ」
 とある関東の地方都市、めっきりシャッターを閉めたきりの店舗が目立つようになった商店街の片隅にある小さな店から、どこか人間味のない、しかし軽妙な声が響いてきていた。
 商店街と一緒に齢を重ね、最近では往時の賑わいを思い出すことも少なくなった住人たちが、いつにない長蛇の列を作っている。
 皆、家の物置や倉から持ち出してきたような古物を抱え、ワクワクと目を輝かせている。
 隠れた目利きとして知られていた「丸島田古物店」が久しぶりに営業を再開したことが、彼らの行動の理由だった。
 一切の不義理も足元を見るようなこともない「人情商売」をしてくれる丸島田屋は、後暗い部分抜きでガラクタを大金に替えてくれるチャンスを提供してくれる場だったのである。
 もっとも、人生の酸いも甘いも知り尽くした彼らが、少年のように未知への期待に目を輝かせているのには別の理由があった。
「うーん、ちょっと残念な結果になりましたね。しかし、これも宿命のようなものです。素晴らしい名作には同じく優れた贋作が現れるのは宿命、光と影のようなもので、避けられないのです。ねえ、『判右衛門』さん?」
「ソウデストモ、ト、ワタシノデータトAIモ言ッテイマスネ。本当ニ美術品ハ難シイ」
 古物店の現当主、島田 昇一の軽妙な語り口に云々と頷くのは、今時珍しいほどの本格的な和装をした、機械的な存在だった。
 人工筋肉や皮膚の代わりに、メカっぽさが全面に出た外部装甲で顔や手足を覆っているので、人間と間違われることもない。
 声もまた、合成っぽさを強く残した、独特の「味わい」のあるものになっている。
「彼」の名は初代判右衛門。目利きを専門にしてきた「丸島田」の技と心意気を受け継ぐ、目利き専門のロボットなのである。
 ただ単に腕が良いというだけでなく、まず見た目から今までとはまったく違う新次元を感じさせる「プロ」の登場が、商店街をいつになく沸き立たせていた。
「昇一、こいつは本物だぜ。知り合いの教授に調べてもらってやっと真贋の区別がついた偽物にも騙されなかった。半信半疑って言うか、良くできたシャレなんじゃないかって思ってたんだけど、はは、まったく科学の進歩ってのには驚くな。悪かったな、疑っちまったし、鑑定の金も払えねえで」
 文房具屋の主人が、やや照れながらどこかバツが悪そうに頭を下げかけるのを、島田は慌てて制した。
「よっ、よして下さいよ、竹田さん。俺だって仲間から鑑定料を頂こうとは思っちゃいません。高校や短大に通ってた時はお世話になったわけですから。恩返しって言うと堅苦しくって好きじゃないけど、生まれ育った商店街に活気が戻ったってだけで、俺には金以上の価値があるってもんですよ。せっかくいい人を見つけて、彼の研究結果を携えて故郷に錦を飾れたんです。これ以上の報酬はなかなかないのではありませんかね」
 島田の言葉に、集まってきた商店街の関係者がどっと歓声を上げる。
 賑やかになってくると、部活やら塾やらで行き来する若者たちの注目も集まってきて、携帯やスマホからのシャッター音が響くようにもなってくる。
 老若男女問わず、やはり親しんだ土地には愛着があるもので、このまま風化するしかなかったような一画が盛り上がっているとなると、つい嬉しくなってしまう人は多いようだ。
「寂れた商店街に目利きロボ登場」というSNSへの投稿は、すぐに全国的、いや全世界的な注目を集めるに至った。
 個人系のサイトやブログ、まとめサイトなどで盛り上がると、「公式」色の強いWEBサイトもすぐさま記事にし始め、さらなる反響を形成していった。
 また、何か定型以外のネタはないかとアンテナを高くしているタウン紙が取材に走ると、すぐに地方紙も動き出し、ほどなく全国紙までが記者を派遣し始めた。
 政治的な要因が見えず、しかもお気楽系の話とあって、各方面への「配慮」も必要なく記事にできる性質だったのが大きかった。
 となると残るは「質」の問題になってくるわけだが、幸い、その点もまったく問題なかった。

 

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