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ラブストーリー

LOTUS 〜Pretty Girl〜 <後>

   

「沢渡? どうした?」
「みっちゃんが! 俺のみっちゃんが近くに来てる!!」
「おいおい、どーゆー第六感だよ」
「んー…………あっ、いた!!」
「マジで?!」

LOTUS』 ―稔×瑞穂―
≪光輝*高等部1年生*5月≫

Illustration:Dite

 

 だって、しょうがねぇじゃん。
 俺のみっちゃん、本当にかわいいんだもん。
 俺がシスコンになるのも、当然だと思わねぇ?

「あれっ、2人とも、まーたオベント持ちで昼会議?」
「そういうおまえは、まーた朝からジャージかよ。ホントおまえ、マジでいつ見てもジャージだよな」
「だって俺、陸上部のホープだし♪」
 高等部用のコバルトブルーのジャージを着込んだ稔が、光輝たちを見上げてニカッと笑う。陸上部の朝練や自主トレに精を出している稔は、雨でも降らない限り、登校したら最後、下校までのほとんどの時間をジャージ姿で押し通していた。
 本当は、授業が始まる前にいったん制服に着替えなければならないのだが、高等部生はそのあたりの規制が暗黙の了解によって少々ユルい上、1年3組の規律委員が揃って稔に甘いと来ているのだ。
 よって稔は、年がら年中ジャージ姿で学園内を飛び回っていた。中等部校舎にもこの格好で出入りするため、「1号館で青ジャージを見かけたら、それは九分九厘の確率で沢渡瑞穂のお兄さん」と言われているほどなのである。
「会議じゃなかったら、どこ行くんだよ」
「天気いーしな、たまには外でメシ食おうかと思って」
「良かったら、沢渡も一緒に来ないか?」
「おうっ、混ぜてくれ!」
 稔は廊下にズラリと並んでいるロッカーの前に走ると、そこから妹と色違いお揃いのランチバッグを取り出し、また光輝たちの前に戻ってきた。
「なあなあ、どうせだったら中庭に行かねぇ?」
「中庭? 別にいーけど、なんかあんのかよ」
 屋上に向かいかけていた足をしばし止め、大樹が軽く振り返って稔を見る。稔は環境委員会が学園と共同開発した、校章入りのマイボトルに口をつけ、麦茶をゴクゴクと飲んでから言葉を継いだ。
「今さぁ、中庭にブドウの花が咲いてんじゃん」
「ブドウ? バカ、ありゃ藤だ、藤」
「そういえば、藤棚がちょうど見頃だったな」
「あれフジっていうのかぁ。俺さ、あの花、好きなんだよな」
「うーわ、オレ沢渡に花を愛でる心があるとは思わなかったぜー」
 からかいつつも、友人のリクエストに応えて階段を降りる。その後ろに続きながら、稔は藤に心惹かれる理由を真顔で熱弁し、光輝と大樹を大いに引かせた。
「まあ、たしかに……妹さんの髪型に似ていないことも……ない」
「光輝、無理すんな」
「え~、なんだよ、似てるじゃんかよ。あのふさっとした感じが、みっちゃんの『ふたつ結び』にそっくりだろ?」
「藤を見てそんな奇特なことを思う人間は、オレらの学園じゃ沢渡くらいのもんだ」
「そうかぁ? 俺なんか、さくらんぼが2個くっついてんのを見ても、『なんかみっちゃんっぽいなv』って思っちまうんだけど」
「……………………え、と……そう……だな…………」
「だから光輝、無理すんな」
 光輝も大樹も、結局のところはかなりのシスコンなのだが、稔のそれは常軌を逸している。だが、それくらいかわいがりたくなる気持ちも、わからないでもなかった。
 瑞穂は、かわいい上に並々ならぬ「頑張り屋さん」なのだ。
 光輝も大樹も、生徒会長を務める花織の奮闘を間近で見てきたせいか、「頑張る女の子」の姿には素直に感銘を受けるタイプである。瑞穂が秀才肌の努力家であることをいち早く見抜いていた2人は、そういった意味でも、瑞穂に目をかけているのだった。

 

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LOTUS 〜Pretty Girl〜< 第1話第2話

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