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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season18-6

   

 犯人である茂原が北萬治氏を誘拐し、どこに隠れているのかわかればこの事件は終わるというのに、皆目見当がつかない。

 政木警部は見習い探偵だけに動かして、ほかの氷室探偵事務所のメンバーは花粉を避けて引きこもっているという。

 大地はいまだ新刊を解読中、隠れ場所のヒントはない。

 政木警部は火守に喝を入れるため電話をかけた。小柴もその一報で改め直した。

 二班に分かれて調査を開始するよう指示を出した。鼓舞された勢いに探偵は重い腰を伸ばすように立ち上がった。

 一方、北萬治を拘束している茂原が大先生の体調を気遣いながら、対話を望んでいた。

 ハイヤーの運転手が茂原が変装したものだった。誰も気づいていなかった。

 茂原は実名をだして執筆したノンフィクション作品を怒涛の言葉で捲し立てていた。

 罪の意識を著者に植え付けるように。そして、茂原は爆発物について恐ろしいことを口走った。

 

 犯人が今どこにいるか、それさえわかればこの誘拐事件は終わる。居場所さえわかれば出版社も屈することなく新刊を発売できる。

「いまだに窮地にいるのはこちらです」近藤は無念そうにうつむいていた。

「そうかもしれない。だがあきらめるのはまだ早いですよ。あの見習い探偵は心底しつこい性格だ。あいつが動いているなら我々警察も止まることはない。いまここでは爆発物の発見が優先です。どれだけの規模の爆弾なのか、被害はどこまで広がるか見当もつかない。それに茂原という男がそんなものを作れるだけの能力があるなら、野放しにはできない。もともとが犯罪者であるのであればな」政木警部はいった。

「警部、犯罪者データベースから茂原 数道の犯罪記録を探りましたが、該当なしです」警官が報告した。

「そうか、いったいどんな犯行を知られたというのか、原稿1000頁もあるのでは、解読に時間を要する。編集者もおぼえていないときている。まったく…北萬治氏も余計なことを公表したものだ。名前や事実を少し変えてフィクションですといって発売すれば誘拐なんてされずにすんだものの…」政木警部はあるまじき言動を放った。

「それが」近藤は苦々しくいった。「最近、先生は落ち目だったんです。ほんとうのところ申しますと」

「なんだと…あれだけ作品を生み出しているというのにか」政木は驚いた。

「それで既成事実をでっち上げようとしたら天命を授かったと、過去の犯罪を解明できるとは思ってもみなかった。と豪語してました。やはり私は大作家になるための運命であると」近藤編集長は燻るようにいった。

「自惚れが強すぎるな、作家とやらは…、とりあえずあとは居場所だけだ。まったく氷室探偵事務所の探偵は手が空かないのか」

「それが花粉症の症状に苦悩して、推理ができないといってました」近藤はちくった。

「なに!」政木警部は頭を抱えた。「一大事だというのに、見習いだけに働かせて、火守探偵もなにをしているんだ」

 

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