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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第8話「知られたくないこと」

   

四年前に失踪したまま、一度も会っていない父へ、エリザは怒りとも悲しみとも言えない感情を抱いていた。

「父様は、兄様と同じ辛い道を選んだ人だから」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週 金曜日に更新】

新章 第8話「知られたくないこと」

 

 
 今日から私は、シエロ・ローレンの弟子。
 この島で学び、生きていく。

 簡単なことではないだろう。認めたくない真実を知ることになるかもしれない。そうわかっているからこそ、私はこの道を選ぶのだ。
 生きると決めた。もう私に、失うものは何一つとしてないのだから。この先は、取り戻すものだけだ。――――そう。全てを取り戻してみせる。あの男から、この世界から。

「エリザ」
「はい」
「これよりアグランドでお前の命を預かる。いいな?」
「はい、師匠。よろしくお願い致します」
「明日以降、家に引き籠るのは禁止だ。まあ、まずはこの島の人間と関わることを覚えろ。ゆっくりでいい、深く考えなくていい。焦んなよ」
「…はい」

 焦り――――。
 言われてみて気づいた。少し焦りすぎていたかもしれない。

「…エリザ。お前はお前に出来ることをやれ」
「私に…出来ること」

 そう言われ、強く握った拳が震えた。

 私には何も出来ないのだと、そう思っていた過去の自分に、手を差し伸べられた気がした。熱く込み上げてくるこの感情をどう表したらいいのだろうか。

 ――――私にも出来ることがある。その事実に心の底から安堵した。

「っ、はい」

 力強く答えた私を見て、師匠は愉快そうに笑った。そして、どこか懐かしむような視線を向けてくる。私と誰を重ねているのだろうか。

「? 師匠…?」
「…やっぱりお前、似てるよなぁ…ベルに」

 『ベル』――――それは、私の父親、ベルモンド・カーネットの愛称だ。私とルイスも、幼少の頃は母様の真似をして父様をそう呼んでいた。王族としての意識が足りなかったのだ。だが、城に仕える使用人の噂や王族達の視線を気にするようになってからは、呼び方を改めた。

「瞳がよく似ているよ」

 ルイスから、師匠と父様は友人関係にあったと聞いていたが、どうやらそれは本当だったらしい。

「ちょっとあなた。その話は……」
「! そ、そうだな…すまん」
「…………………で……か」
「ん?」

 私は震える唇を開き、もう一度彼等へ言葉を繰り返した。

 

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