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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

あしたになれば〜後編〜

   

事件の後、尋ねてきた夕実さんと、今回の事件について話をした。だが、夕実さんが話してくれたこととカスミさんが言ったことは大きく食い違っていたのだ。

 

「!?」

「そうですか……すいません、長々とお邪魔してしまって。このへんでお暇(いとま)しますね。あ、ところで、カスミさんてこの近くのかたなんですか?」

「ええ。すぐ近所ですよ。山手のほうにある学生マンションに住んでます」

「山手の学生マンションというと、あの少し家賃が高めの、あのマンションですか?」

「ええ、そうです。私も以前、そこに住んでたんですよ。でも、あの事故を起こしてしまったせいで色々とお金がかかることが多くなってしまって……それでここに引っ越してきたんです」

「そうなんですか……。つかぬ事をお聞きしますが、カスミさんてどんな感じの女性なんですか? 例えば、真面目そうな雰囲気だとか……」

「カスミは少し派手ですね。真面目な感じには見えないかもしれないです。どちらかというと、今時の学生らしく、遊んでいる風な感じを受けると思いますよ」

 夕実さんと話をしてから一週間が経っていた。その間、誰にも会わず、今回の出来事を一人でじっくりと考えていた。あの時はワケも分からず、流れのままに行動していたが、時間が経ち、過去を振り返ると、今まで見えていなかったことの多さに気づく。そして僕の考えがまとまり始めた時、あのニュースが飛び込んできたのだ。それは珍しく早起きした時に目にした、朝の情報番組でのニュースだった。

『今日未明、××市にある山林に停められていた車の中で、男性が死んでいるのが発見されました。車の中には七輪と大量の練炭が残されており、発見当初は男性が自殺を図ったものと思われていましたが、遺体に不自然な点が多く、警察では、自殺と事件の両方で調べを進めております。なお、持っていた荷物から、同市に住む、無職、松島祐樹さん(二二)であることが確認されました』

 僕はバイト先へと向かう前に、ある場所へと向かっていた。どうしても、今日向かわなければならない場所。夕実さんを本当に自由にするためには、避けては通れない場所だった。マンションの一階。エントランスのポスト付近にその姿を見つけた。ポストの前で新聞を広げ、記事を読んでいる人物に僕は話しかけた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

あしたになれば〈全3話〉 第1話第2話第3話

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