幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season18-8

   

 御影は政木警部や火守たちと合流した。情報の一本化のため意見を出し合っている中で、火守の携帯電話に雲田からメールが届いた。

 大地が新刊を読み終えたようだ。そしてある矛盾に気づいた。

 伯田警部補と黒川刑事は目黒区内で茂原との関係性を洗うよう政木警部から命じられた。

 メールを読み進めると北萬治は本文ではなく解説の頁に茂原の人生についてコメントしていた。どうやら目黒区内で暮らしていたことを示唆していた。

 御影と火守は伯田警部補たちを追うように車を走らせた。

 二人は区役所にいた。情報収集に協力してもらうため窓口で事情を説明しているところに御影たちも追いついた。

 除け者にされる探偵を背後で感じながらも警部補は職員が持ってきた資料に目を通す。しかし、それはいったい誰を捜すための資料なのか、御影はぼそっと棘を刺す。

 そう茂原ではない。雲田が送ってきたメールには続きがあった。
 
 

 警部補は地どり捜査に切り替えた。

 御影は過去に目黒区内で殺人事件がなかったか調べるといった。そのとき二通目の雲田からのメールが届いた。

 過去の事件を発見した。一家惨殺事件の未解決事件だ。これが茂原とどう繋がるかはまだわからないが、犯人はまだ捕まっていない。

 目黒区内一家惨殺事件を警察のデータベースで洗うため火守は政木警部のもとへ戻る。

 御影は一人目黒区内を聞きこみすることを命じられた。

 

 平城出版社近くの会議室に重役と近藤が重苦しい空気に押しつぶされるように静まり返っていた。

 土方は遅れて同席したが、その空気に触れたとき躓いた。

 政木警部はその会議室から出て一階の歩道で佇んでいた。火守と森谷とで意見の出し合いをしていた。そこに御影たちが合流した。

 森谷が大きなマスクをしていたが、顔色はあまり普段とかわらない。変装している森谷に花粉症は無縁だと御影は睨んでいる。

「そうか、手がかりなしか…」政木警部は顔をしかめた。

「爆発物も発見できないですか?」御影が訊ねた。

「ビルの隅々まで探索したが見つかっていない。ほんとうに爆発物を設置したのだろうか。まったくもって気配すら感じない」政木は首を振った。

「でも、印刷会社は爆破して20名もの負傷者が出ている。嘘だとは思えない」御影は熱くなっていた。

「だけど今度は嘘ってことも、注意をこちらに逸らして脅迫を続行させるためにとか」伯田警部補がめずらしく頭脳を使った意見をいった。

「それは視野にある選択のひとつだ。だが、それはない」政木は警部補の意見をきっぱり否定した。

 川上はぷっと、吹き出した。ひと睨みする伯田警部補だった。

 そのとき火守探偵の携帯電話に着信がとバイブレーション機能が同時に知らせた。

「おっ、大地さんとかか?」川上は伯田のきつい睨みから逃れるために背を向けて火守に向き直った。

「いや、雲田さんだ。メール…あいかわらず電話が嫌いなんだな…」火守は通話が手っ取り早くて済むことを、雲田は通話が嫌いだった。コミュニケーションが取りずらくて依頼の内容によってはコンビを組まされることもなくはないが、最近ではもっぱら避けていた。

「なんて?」川上は鼻をすすりながらいった。

「大地ちゃんならきっと犯人の居場所を読み解いたと思ったのに雲田探偵じゃねー」水桐探偵はどこか雲田を否定的だった。

「なんか犯人の茂原について奇妙なことがわかったって…これは」火守だけはその情報を刮目し驚愕していた。

「雲田さんがそれを突き止めたってこと?」御影はまだ見ていないがあまりにも火守の顔が意外過ぎるほどに驚いているから疑念が走った。もしかしたら茂原のマンションで突如眼前を横切るほどの違和感のひらめきの断片を見たことに関係があるかもしれない。

「いや、大地さんだ。どうやら最後の一頁まで読んだらしい。犯人である茂原の名前は載っている。だが、探偵として推理すると、おかしな矛盾に気づいたようだ」

「矛盾? ノンフィクションなのに?」川上がいった。

「現在の居住する十条ではなく、目黒区内に住んでいたと書いてある。そしてそれは幼少の頃だ」火守はいった。

 たしかに矛盾を抱いた。幼少の頃に茂原の経歴に目黒区に住んでいた記録がないからだ。

 というより茂原の過去はほとんどの者が知らない。

「伯田警部補」政木警部が唐突に指示をする。「いいか、茂原 数道という男の経歴を調べろ。戸籍や出生だ。わかったら幼少の頃の友人関係を洗え」

「わかりました。黒川刑事、ついてこい」伯田警部補はすぐに黒川刑事を連れて移行する。

 全員が考える人のように、顎に指を置いて肘を曲げて考えていた。

「さて、これをどう読み解くか?」川上がいった。

「いや、まだある。どうやら本文ではなく解説のところに作者の北萬治氏がコメントをしている。そこに目黒区内に幼少の頃に住んでいた犯人、その人生は過酷で悲惨で憐れむものだと書いてあるってよ」火守はめずらしく他人事のような言い回しでいった。

「茂原、なんだ…いったいどんな人生を送ったというんだ?」御影は答えが出ない数式に苦悩していた。

「大地ちゃんもしっかりと解き明かしてくれているわよ」水桐に直接メールを送ってきた。「簡潔的にね」

「火守さんと違う内容なんですか?」御影が水桐をみた。

「たぶんね、とりあえず茂原が幼少の頃に住んでいた目黒区内を探ればいいんじゃない?」

「目黒区内はわりと広いのだよ」森谷は足での捜索は苦手だといっている。

「車で移動したらいいわ、森谷さんと川上さん、運転手に御影くんにしたら?」水桐は適当にあつらえた。

「おいおい、勝手なことをまた…」川上は口を酸っぱくするように目頭を押さえた。

「いいっすよ、いまなら伯田警部補たちに追いつくかもしれない。俺が一人で行きますよ」御影は自ら名乗り出た。

 目黒区役所に訪れるのが手っ取り早い。過去の住所から茂原の人生を手繰り寄せる。どこかでよく知る人物と遭遇して事実を聞き出す。

 特に家族に訴えかけるのが、この悲惨な事件を止めるキーワードとなろう。

「なら俺が御影と二人でいく、あとの者はここで待機だ。出版社の近藤さんたちと情報の共有をはかってくれ」火守がいった。

「了解」

 御影は火守とアイコンタクトを取るように視線を合わせた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
-, , , ,


コメントを残す

おすすめ作品

家元 第十部 危機を越えて

   2017/09/22

ノーベットノーペイ

   2017/09/22

見習い探偵と呼ばないで!【番外編・御影解宗のデート】3

   2017/09/22

ロボット育児日記26

   2017/09/21

怪盗プラチナ仮面 11

   2017/09/20