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SF・ファンタジー・ホラー

ロボット育児日記 2

   

 ロボットが世界経済を支える、ずっと未来のお話。
 人間の霞が、人間の生きにくいT都E区に残る理由とは。

 SFハートフルラブコメディ!!

 

 食事の用意が出来る間に、先程話そうとした、俺がT都E区に残る理由を話したいと思う。
 生まれも育ちもT都E区であるわけだが、学校教育はロボット達と同じ校舎とクラスで育った。先生は一応配慮してくれるものの、先生も勿論ロボットなわけで、その理解には苦しかったようだ。十分な配慮が得られない部分は、申し出るよう言われるのだが、なにぶん子供なので周りの目も必要以上に厳しく言い出し辛い。
 身体能力は勿論のことなのだが、頭の出来も違えば、生身の人間なので直ぐ疲れるし怪我もする。嫌だと思う先生も多かっただろうに。
 その学校での人間は、俺ともう一人女の子がいた。可愛らしい女の子だったが、大人しくて地味な存在だった。俺は話しかけたかったけど、結局女の子が引っ越すとき少し会話しただけで終わってしまった。女の子相手で、恥ずかしかったからそのとき会話出来たのが今でも奇跡だと思っているくらいだ。ちなみに、その女性に対する上がり症は今でも健在である。
 で、その女の子との約束が未だに俺をこの地に縛り付ける。名前も顔も覚えていないのに、何故かその約束だけは守らなきゃいけない使命感があるのだ。どうせ、人間の俺なんかと結婚してくれる女性なんて見つかりっこないだろう。俺が優秀な人間だったら有り得たかもしれないが、今は誘拐されて人間競売に流されないように注意するのが精一杯だ。
 で、肝心の彼女との約束ね。
 あれは、確か雪が降り積もる寒い冬だった。クリスマスが近かったのかな、赤と緑と白のネオンが煌めいていて、クリスマスソングが流れていたのを覚えている。
 あの日、俺は母さんが風邪を引いてしまっていたから、薬局に薬を買いに行っていたんだ。一応、人間用の薬も少しだけど薬局に置いてある。病院に行く程でもなかった風邪だったんだろうな。
 その帰り道、公園でその子を見かけた。彼女は寒いのにコートも着ずにセーターとスカート姿のまま、ブランコに揺れていた。赤い顔で、何度も何度も白い息を手に吐きかけながら擦り合わせていた。泣いていたようにも見えた。
 俺は心配でどうしようか悩みながら、公園の木の影から彼女を見ていたんだ。
 暫く待っていても彼女は帰ろうともせず、何度もくしゃみを始めた。
 俺は意を決して、近くの自販機で熱い缶のココアを2本買ったんだ。
「こんにちは。これあげるよ」
 心臓がはちきれそうで、どきどきしていたのを覚えてる。
「え? いいの?」
 と、女の子が顔を上げた。顔が赤くて、声が震えていた。
「うん。間違えて2本買っちゃった」
 女の子はココアを受け取ってくれた。よっぽど寒かったのか、直ぐに飲まずにそれで暖を取った。
「あ、お金」
「いいよ、あげる。クリスマスプレゼント」
「そう、お返ししなきゃね。待っててね」
「いいよ」
「でも」
 その子があまりにも寒そうで、可哀想で、でも可愛くて自分の巻いてたマフラーをかけてあげた。
「貸してあげるね」
「ありがとう。ちゃんと返すね」
「うん」
 何をしていたのか、どうしてるのか、お腹は空いていないのかとか色々聞きたかったけれど、当時の俺にはそれだけが精一杯だった。
 それが原因かどうかはわからないが、その晩俺は酷い風邪を引いてしまい、1週間程学校にも行けなかった。
 俺が登校したときには既に彼女の姿はなく、圭介から彼女が遠くに引っ越したと聞かされた。マフラーを返してもらう約束も果たしてもらえず、今となればそんな約束を彼女が覚えているかどうかもわからないし、ボロくてそんなに良いマフラーでもなかったのだが、あの頃の約束を俺は忘れられずにいた。
 あの子が戻ってくる可能性など無いに等しいし、俺のことを覚えている可能性だってそうだ。あの子が何処に引っ越したのかもわからないのに……夢見がちな話だと、自分でもわかっている。でも、出来れば見つけたいと思うし、彼女が結婚して子供がいて幸せならそれでいい。なんて声かけていいかなんてわからないけど、マフラーを返せと言いたいわけでもないけど、寧ろマフラーなんてどうでもいいのだけど、なんというかひと目見たいなって思うんだ。
 俺は惨めだけど、不幸か問われたらそうでもないし、それなりに毎日暮らしていると自分では思ってる。
 
 ブー……ブー……

 

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