幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第9話「こども」

   2017年4月3日  

キールに言えない真実を抱えて、エリザは島で生きていく。

「どうしてここまで、『子供』である自分を捨てたいのか、私にはわからない」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週 金曜日に更新】

新章 第9話「こども」

 

***

「エリザー!!」

 聞き慣れてきた少年の声と勢いよく開かれた扉。手に持っていた花瓶を落とさないように机に置くと、私は息を切らして座り込んだキールの頭を撫でた。

「キール、おはよう。今日はいつにも増して慌てているのね。お水飲む?」
「うん! …あっ、じゃなくて、えっと…」
「?」

 もじもじと躊躇いながら、私と床を何度も見比べて、言葉を濁す。様子がおかしいと感じた私は、首を傾げて彼の言葉を待った。

「えっと…えっとね、その」
「うん」
「そ、の」

 顔を真っ赤にして俯いてしまった。いたたまれない気持ちになった私が、声をかけようとしたその時、キールが顔を上げた。

い、一緒に外へ行かないっ?
「へっ?」
「…………」
「…………」

 無言で私の答えを待つ彼につられて、私も無言になってしまった。
 この言葉を言う為に、あれほど緊張していたのかと思うと、思わず吹き出しそうになる。

 気を取り直して微笑むと、私は彼に手を差し出した。小さな手が私の手を掴んだのを確認すると、ぐいっと引っぱり、立ち上がらせる。

「早速、連れ出してくれるのね。ありがとう」
「…! 嫌じゃないの…?」
「え? どうして?」

 再び言葉を詰まらせたキール。今日の彼は、やはり少し変だ。

「何かあったの?」
「…………」
「それとも、
「っあ」

 わかりやすく、私の言葉に反応すると、今度は顔を真っ青にして俯いた。ころころと表情を変える少年を黙って見つめて、私は目を伏せた。

 恐らく、私について何か耳にしたのだろう。それで、戸惑っているのだ。私とどう接したらいいか、どう答えていいのか、この小さな少年は悩んでいる。
 キールは幼い。だが、どこか大人びている彼は、嫌でも頭で考えてしまうのだろう。

 伏せた瞳でキールを見下ろし、私は口を開いた。

「師匠から聞いたんでしょう、私のこと」
「…うん」
「そう。キールが何を聞いたのか、教えてくれる?」
「…………」

 言いにくいのか、彼は口を開こうとしない。そんな彼に私は笑顔のまま声をかける。彼を安心させる為だ。

 

-SF・ファンタジー・ホラー
-, , , ,


コメントを残す

おすすめ作品

怪盗プラチナ仮面 11

   2017/09/20

見習い探偵と呼ばないで!【番外編・御影解宗のデート】2

   2017/09/20

ロボット育児日記25

   2017/09/19

モモヨ文具店 開店中<33> ~日付スタンプを使っての琉華の覚え書き~

   2017/09/15

ロボット育児日記24

   2017/09/14