初恋と結婚

私は結婚して30年。5年前に事業で躓き、家庭もおかしくなり、今は家庭裁判所で調停中だ。

そんな折、高校の同期会に出席したが、ひょうんなことから二次会は「初恋談義」ならぬ「初体験談義」になってしまった。

私の初恋相手、圭子も参加していたが、お互いに照れくささと、気まずさから一言も話さずに別れてしまった。

その帰り道、幼馴染で高校も同級生だった雅美から、「離婚するの?」と聞かれ、「多分、そうなると思う。」と私は答えたが、彼女は「結婚は初恋とは違うのよ。簡単に離婚なんかしちゃダメよ。」と意見してくれた。

帰りの電車に並んで座り、雅美と互いの初恋の失敗原因を話し合っているうちに、私はもう一度妻に頭を下げて、やり直そうかと考え始めていた。

 

 
離婚調停
 

家庭裁判所に「調停の件で、来たのですが」と受付に行くと、「あちらでお待ちですよ。」と言われた。

妻は既に来ていた。

会うのは2ケ月振りだが、彼女はこちらをちらっと見ただけ、私も何も話し掛けなかった。

「後藤さん、中にどうぞ。」

呼ばれた部屋は会社の会議室のような雰囲気で、テーブルを挟んで調停委員と向き合う形で、私たちは並んで座らされた。

「最初ですから、お二人揃って入って頂きました。」と前置きれ、調停の手続きや進行予定などについての説明を受けた。そして、最後に「調停は裁判ではありません。私ども調停委員は、お二人からお話を聞き、解決に向けて手助けします。」と言われた。

結婚して30年、どうしてこんなことになったのか、元々の原因は私にある。5年前、事業に躓き、なんとか立て直そうと家にも帰らず、資金集めや客先回りに必死になっていたのだが、「あなた、これを使って」と差し出してくれた彼女の預金を「そんなのじゃ足りないんだよ。」と突っ返してしまったところがいけなかった。

抱えていた借金の額からすれば、確かに全く足りないものだったが、イライラしていた私は妻の気持ちさえ受け止める余裕がなかった。

その後は、お決まりのように、些細なことまで、刺々しい言葉の応酬、幸せだと思っていたものがあっという間に崩壊し、気がついた時には手遅れになっていた。

 
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