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SF・ファンタジー・ホラー

ロボット育児日記 3

   

 霞の前に現れた一人の幼女。
 慣れない育児に奮闘しながらも、幼女を警察に連れていこうとするのだが…。

 SFハートフルラブコメディ!!

 

 昼の正午過ぎくらいから始まった圭介との飲み会は、俺が激しい吐き気で飛び起きるまで続いていた。……というか、夕方くらいからそれ以降の記憶が無いので、いつ終わったかはわからないが、恐らくどっかで俺が眠りこけたので勝手に終了したんだと思う。
 キッチンシンクに胃の中の物を全部ぶちまけると、今度は激しい頭痛が俺を襲った。
 涙目でぜえぜえ息吐いてる俺を、冷静な目で圭介は見た。
「霞ちゃんさあ、懲りないよね。人間って、学習能力ないのかなって思っちゃうよー」
 妙に冷静な声がムカつく。背中さすってくれたっていいじゃないか。
「学習するけど……」
 反論しようとして止めた。というか、出来なかった。ごもっとも、なので。
「オレ、二日酔いになったことないし、一生ならないよね。もうさ、いっそ霞ちゃんもロボットになっちゃったら?」
「やだ」
「なんでさー」
 なんでって言われても……。俺だって、ロボットになった方が楽に生きれるんだろうなって思うよ?
「まあ、世界が許さないよね。天然記念物なんだし。てか、オレ一応ロボットだからさ、霞ちゃんのメディカルチェックも出来るんだよ? もう止めとけって言ったの覚えてない?」
「……覚えてない……」
「まあ、いつものことだよね」
「…………」
 俺は何も言えなくなって、取り合えず引き続き吐いた。
「んじゃ、オレこの後デートだからさ。身体には気を付けて、ゆっくり寝るんだよ」
 その台詞はもう遅いと思いながら、いつの間にか圭介が敷いていった布団の上に寝ころんだ。
「……良い休日を」
「はいよー! 霞ちゃん、じゃあまた来るね」
 圭介は、猫っぽい声を上げながら、玄関のノブに手を掛けた。
 あの甘えるような猫みたいな声に、世の女性はコロリと騙されるんだろう。年下、年上、同年代関係なく、女という性別なら良いらしい。いつか殺されるぞ、この男。
「ぎゃ!」
 で、ドアが開くと同時に圭介が声を上げた。
 俺の頭の中のドッカン工事員が、誤って壊していけない壁を壊したような、そんな衝撃が脳に走る。
「圭介、声上げるな。俺、死ぬ」
 が、構わず彼は俺の布団を引っ張った。
「か、か、か、霞ちゃん! 見てよ! 何?」
「はあ?」
 と、仕方無しに俺が玄関の方を見ると、ウサギの耳のようなカチューシャを着けた白いワンピースの女の子が立っていた。年は2、3歳くらいかな。よちよちと圭介の後を付いて、俺の部屋の玄関に入って来た。
「隠し子?」
「バカ! 子供なんているわけないじゃん!! よく見てよ!」
 言われたままよく見ると、幼女は首から何か下げていた。プレートのようなもので
『わたしをひろってください。かわいいウサギです』
 と書かれてあった。
「ウサギ?」
 意味が分からないので、取り合えず人の気配は無いかどうか玄関の外を覗いてみた。
 空の段ボールが、置かれてあった。嫌がらせのように、俺の部屋の前に……。
「霞ちゃん、拾ってあげなよ」
「あほか。お前、犬や猫じゃあるまいし、拾うとかそういう問題じゃないだろう」
「じゃあ、警察連れてってあげなよ。じゃあね」
 と、圭介は逃げた。
 残された俺と幼女。どうしろと言うのだ。あ、警察か。
 俺は溜め息を出すと、改めて幼女を見た。赤いぷにぷにしたほっぺと、くりくりした茶色の眼で、何も知らないといった表情で俺を見た。何故か裸足で、その足は酷く汚れていた。
「くちゅん!」
 と、幼女がくしゃみをした。
 ここに立たせておく訳にもいかないし、追い出す訳にもいかないので、俺は取り合えずこの子を部屋の中に入れた。あと、近所の人に怒られそうなので、幼女の物と思われる段ボールも一緒に部屋に入れた。
「名前はなんて言うの?」
 俺が問うが、幼女かぽわんとした表情で首を傾げた。俺は自分で自分を指さしながら、ゆっくりはっきり
「な・ま・え」
 と言うが、更に幼女は首を傾げた。あ、俺の名前だと思ったのかな。今度は、幼女を指さし名前と再び繰り返した。
 その指を幼女は、かぷりと噛んだ。
「ひゃ!」
 と、思わず情けない声が出た。甘噛み。痛くはないが、予想外の行動に俺は酷く驚いた。それが、面白かったのか幼女がきゃっきゃと笑った。
「もう、じゃあウサ子ね」
「うさこ?」
「そう、ウサ子」
「うさこぉ!」
 幼女は、飛び跳ねて笑った。俺のネーミングセンスなんぞ、そんなもんだ。ウサギみたいな子だから、ウサ子。
「ウサ子、何か食べる?」
「ん」

 

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