アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第11話「島民達の想い」

ピアズとマイルの母親と会ったエリザ。彼女達が語る故郷への思いは、彼女の心を強く揺さぶった。

「今、私の目の前にいるのは、私が守れなかった国民だ」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
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新章 第11話「島民達の想い」

 

***

「あら、あなたもしかして、長のところの?」
「えっ…?」

 スウェナと一緒に庭の手入れを始めようとしたその時だった。声をかけられ、慌てて顔を上げると、そこには三十代ほどの見た目をした女性が二人。もちろん見かけたこともなければ、話をしたこともない初対面の女性達だ。だが、どうやら彼女達は私のことを知っているようだった。

「あ、あの……エリザです、初めまして」

 なるべく丁寧になりすぎないように気を付けて、お辞儀をする。そんな私を見て、二人は驚いたように顔を見合わせると、くすくすと笑った。

「エリザちゃんね?」
「噂通り可愛い子だわぁ」

 噂――――?

 首を傾げた私にスウェナが言う。

「エリザちゃん。彼女達はマイルとピアズのお母さんなのよ
「そうなんですか…!?」
「私はナナ。マイルの母です」
「ピアズの母のマーロンよ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
「ふふっ、いつもうちの子達と遊んでくれてありがとう」
「そんな…とんでもない。私が遊んでもらっているんですよ。こちらこそいつもありがとう」

 目覚めて以来、子供達とばかり話をしていた私は、少しの緊張と共に逸る胸を押さえた。

 マイルとピアズは、亡国の出身だと言っていた。ならば、彼女達も――――。

「で? 今日はどうしたのよ、突然」

 庭仕事を邪魔されたスウェナが、機嫌悪そうに唇を尖らせた。

「だって、マイルがエリザちゃんの話ばかりするから気になってねぇ」
「うちの子もなのよー! 『』だなんて言ってたわよー」
「……でも本当に…お姫様みたいねぇ…」

 懐かしむように目を細めた彼女達。そして、ふと思い立ったかのように、マーロンが手を叩いた。

「ねえ! よかったら今から遊びに来ない!?」
「え!?」
「あら! いいわね!」
「今日は息子達がいないからゆっくりお話出来るし!」

 マイル、ピアズ、そしてキールも、今日は師匠と共に船で海に出ている。島の少年達で漁を行うのだそうだ。

 楽しそうに盛り上がる二人を見て、私は思ったことがある。だが、それを行動に移していいものなのかどうか、判断が出来なかった。

「ね? いらっしゃいよ」
「お茶でもしましょう?」
「……え、っと……」

 口ごもり、黙り込んでしまった私を見て、スウェナが動いた。
 土や泥で着ている服が汚れないようにかけていたエプロンを、背後からするすると取り去られる。その行動に驚いている私へ、スウェナは強く頷いた。

 
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