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依子の本気汁 2

   

 本気汁とは何か。

 僕は生徒の「誤った理解」を改め、自分が信じる「本来の意味」を教える決意を固めていた。

 すべては、一人の生徒を救うためだ。もちろん、容易でないのは分かっていた。

 

 
 今、僕は理科室に一人で本田依子を待っている。壁の時計は午後3時45分を指していた。

 正直なところ、自分の考えた筋書き通りに事が運ぶという自信はなかった。何よりも、本田が僕を信頼してくれるかどうか。この無慈悲な世界でのありがちな展開は、さまざまに想定できる。
 

【シナリオその1】本田依子が保護者を伴って現れる。「娘から聞きました。あの、先生。娘と二人きりで何をしようというのですか?」
 

【シナリオその2】本田から話を聞き出した高橋と前川が突然戸を開けてスマホを向ける。理科室に一人たたずむ僕の写真が、「傷心の本田依子(16)に放課後デートを持ちかけ、下半身ギンギンで待ち焦がれる担任教師・水橋健司(25)」というキャプション付きで拡散される。
 

【シナリオその3】深夜まで本田を待ち続け途方に暮れる。
 

 この三つの中では「その3」が、僕自身のこうむる実害は一番少ないとも考えられる。しかし、やりきれないことこの上ない。

 「その2」に帰結した場合、僕の立場はどうなるか。ややこしいことになるだろうが、被害が僕一人にとどまるならそれも仕方がない。何の役にも立たなかった僕の代わりに、誰かが本田を守ってくれる一縷の望みは残る。

 もっとも、弱者は常に強者の側に群れたがるのが世の習いなら、状況は一層悪化するかもしれない。
 

 そんなことを思い巡らしつつ僕は待った。間もなく午後4時。心に重苦しいものがわだかまり始めた時、理科室の戸が開いた。

「遅くなりました」

 本田は一人だった。ひとまず胸を撫で下ろし、次の段取りを頭の中で確認する。
 この計画を思い付いた時、自分ながら突拍子もないと思った。そして、問題の解決につながる何らの保証もない。

 だが、これで解決できなければどうしたらいいのだ。世界を変えるか? 革命でも起こせというのか?

 今後恐らく千年は眠り続けたままであろうこの国を、根底からひっくり返せというのか? 僕一人の力で? 詭弁もいいところだ!
 

 

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