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SF・ファンタジー・ホラー

透明の世界 4話「深雪ちゃんは傍観者(1)」

   2017年4月27日  

 

***

恋文ラブレター?」
「いや、そうじゃなくて」
「勇気がある男だ。まさか、よりにもよって君に惚れるとは」
「いや、だから違うって――――てか今のどういう意味?
「…いい紙だ」

 話を逸らすように、深雪ちゃんはそう囁いた。

 今朝、私の下駄箱に入れられていた一通の手紙には、差出人の学年と名前が記されていた。だが、文面からして、それは恋文とはかけ離れているように思える。
 その赤い封筒をひらひらと揺らして、深雪ちゃんは面白そうに笑った。

「それで? どうしてこれが君を悩ませているのかな?」
「…読んでみたらわかるよ」
「ふうん。それじゃあ失礼」

 彼女は笑顔のまま、躊躇いなく封筒の中から便箋を取り出すと、文面に目を通していった。そして、片眉を上げる。

「…何だこれは」
「今までにないパターンでしょ…」

 手紙にはこう記されていた。

 ――――『木島きじま衿子様。いつもあなたを見ていました。だから、家を出る時は必ず右足から踏み出すことも、手を洗う時は右手の指先から石鹸をつけることも、悩んだら顎に手を当てる癖も、あなたのことなら何でも知っているのです。どんなことでも覚えているのです。だから、あなたにも知ってほしい、私のことを。今日の放課後、屋上で待っています』。

 ストーカーを思わせる露骨な文章と、意味不明な言葉の羅列。私にはそこに恋情があるとは到底思えなかった。

 

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