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縁は異なもの、味なもの(後)

   

大学で都会に行きUターン就職したはいいけれど、どことなく地元愛が薄い主人公と、その真逆の兄、そしてそんなことよりとりあえず趣味の御朱印を集めたい親友。そんな三人による、不思議な縁を感じながらのとある観光地巡りのお話。後編です。

 

 車は伊豆縦貫道から伊豆中央道、修善寺道路と抜け順調に修善寺の街へと入った。
 紘一はあらかじめナビで選出しておいた有料駐車場に車を止める。三人は車から降り、そこから徒歩五分ほどで着くという修禅寺に向かって歩き出した。
 車が問題なくすれ違える程度の道幅の道を、大きな川沿い向かって歩く。大きな川の左右にある欄干は特徴ある赤。それについてはテレビなどでみたことがあった美穂達である。
 川の潺を耳にしながら狭い土地を活かした蕎麦屋や土産物などを横目に緩やかな坂を上っていくと、前方に囲いのある足湯のような場所を見つけた。弘法大使が手にした「独鈷」で岩を叩いたところ温泉が湧き出たことが由来という、かの有名な「独鈷の湯」である。その少し手前、右手側の道沿いにいよいよ目的地が姿を現した。
 運動不足でも支障が出ないほどの段数の石段を登るとまずは、改修工事を終えたばかりの趣のある山門と、色合いも鮮やかな木目の枠に収められた二体の金剛力士像が、参拝者を出迎えてくれる。その山門の先がいよいよ本堂だ。

「へえ、雰囲気あるわね」
「ここが修禅寺か。初めて来たわ」

 美穂と恵美が思わずそう声を漏らすと、紘一が「まずはそこで手を清めて」と言った。
 みると、山門を抜けてすぐの右手に水屋が建てられていた。参拝者はまずそこで手を清めることになるが、
「ここの水屋は温泉なんだ」
 これまで――といっても限られた程度の数だけれど、それでもお清めの水屋の水が温泉なんて初めてだ。
 半信半疑でそこから流れている水に手を浸してみた二人だったが、
「どれどれ……うわち!」
「美穂、大袈裟……って、熱!」
「だから言っているだろ、温泉だって」
 年長者のいう事は素直に聞けよ、と紘一にあきれ顔をされつつ、二人は気を取り直して若干熱めの、でもやけどしない程度の熱さの湯で手を清めた後、本堂に向かった。
 
 

 

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縁は異なもの、味なもの 第1話第2話

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