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依子の本気汁 3

   

 正義は我にあり。周囲の異論を押し切って、僕は文化祭に「本気汁カフェ」を出店させた。

 本田依子を犠牲にはしない。僕の頭にあったのはそれだけだ。

 

 
 しばらくの間、僕は本田依子に対して過保護な兄のように振る舞った。携帯でも家の電話でも高橋と前川の相手はしないように、もし接触を図ってきたら必ず僕に知らせるようにと指示した。

 授業が終わって本田が不安そうにしている時には、家の近くまで送って行ったことさえある。とにかく彼女をおびやかすものすべてとの接触を断ち切るよう、僕は最大限の努力を払った。はたから見れば、教師の分を超えた身びいきにも映っただろうが、それくらいはして当然だと思っていた。

 一方、文化祭への準備も本格化してきた。各クラスから上がった出展企画は、実行委員会を通じて職員会議に掛けられた。
 

「水橋先生のクラスでは、随分とユニークな出し物がありますね?」

 教頭の刈谷光夫が僕の顔を見て渋面を作っている。会議室に顔をそろえた教師たちの冷ややかな視線を、僕は肌で感じていた。

 もともと僕のクラスでは、ボランティア活動の記録動画上映が予定されていた。もっともこれは、あらかじめ文化祭への出展を意図して行った「河川敷の清掃活動」「特養ホームへの慰問」の記録という、ありきたりで無難な内容だった。

 このメイン企画会場の横で『清交学園女子の本気汁カフェ』を出店することを、僕はクラスの生徒に提案し、参加者を募った。その結果、男子4人、女子3人が参加を申し出てくれた。もちろん、生徒の自主性を重んじるべき文化祭で、教師の意向によって企画が決められてはならないから、実行委にはあくまで生徒の発案として申請することも了承してもらった。少なくともこの時点で僕は、たとえ担任の発案だとしても生徒が同意していれば大差はなかろうという程度の認識だった。

 企画名のきわどさにもかかわらず実行委の審査はすんなりと通ったのだが、職員会議はそう簡単にはいかなかった。

「しかも何です、『……カフェ』? 親御さんが聞いたら大騒ぎになりませんか」

 怪訝そうな顔をする刈谷教頭に、僕は答えた。

「実は、前川理奈の父親から説明を求められたので事情は話しました」
 

 

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