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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第13話「守るべきもの」

   

アグランドに留まらせようとするシエロへエリザは語る。そしてついに、キールに真実を告げるのだった――。

「兄と引き離されて、生きることも全て諦めようとしていた私をね、守ってくれた人がいるの」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

新章 第13話「守るべきもの」

 

***

 かつて、カーネット王国で生きていた民達は、住む場所を追われ、この島に辿り着いた。――――本当は、帰りたいはずだ。生まれ育った故国へ。
 希望を捨て、その思いも夢も諦めれば、海へ溶けてなくなってしまう。それはとても寂しくて、辛いことだ。

 握り締めた拳で涙を拭う。

 ――――彼女達は、誰も恨んではいなかった。それは家族を失わずに済んだからだ。彼女達が守るべきものが、まだここにあるから、壊れずに済んでいる。だが、それが永遠に続くとは限らない。プランジットでの戦いは、酷いものだったから。
 残酷で、卑劣で、悲しくて。突然起きたあの争い。アグランドもそうならないという保証はどこにもないのだ。
 ならば――――。と、私は師匠から身を離して、空を見上げた。

 茜色に染まる空。その色を写す水面。目を閉じて、私は瞼の裏に焼きついた景色を噛み締める。

 ――――ならば、彼等が脅える未来を私が変えよう。彼等の絶望は私が消そう。彼等の分まで私が血を流そう
 取り戻す為に、二度と大事な人を失わない為に戦うと、そう決めたのはこの私。全て背負うのだ。それが、私の望む『エリザ』だ。

 私は私の覚悟に疑問も後悔も抱かない。今ここで初めて持った考えではないような気がしたからだ。それが私なのか、それとも聞いたことのある言葉だからなのかはわからないが、妙にを覚える。
 ――――私は、この島を遠い昔から知っている。そして、かつても誓ったのだろう。『あの人』の幸せを。

「……え」

 『あの人』とは、私は一体誰を思い浮かべた――――?

「…………ザ。エリザ!!
「! あ…師匠…」
「どうしたんだ急に。耳が遠くなったかー?」
「なりませんっ!」
「じゃあ、疲れたんだろう。暗くなる前に帰るか。スウェナとキールが待ってるぞ」
「……師匠っ」

 先を歩こうとした彼の腕を掴む。

「! おお、どうした」
「キールは、シアンが行方不明になってしまった理由を知らないんですよね?」
「まあ、そうだが……――――って、まさかお前っ

 目を見開いた師匠に、私は強く頷いてみせた。
 ――――いつまでも黙っているわけにはいかない。私の口から真実を話さなければ。その上で彼に頼みたいことがあるから。

 

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