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ファンタジー

DISCORD BRAKERS – 2 [ 5 ]

   

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!

 割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

 ヒュンッ――!
 

 近くで風を切る音がしたかと思うと、キラの背後に何か気配を感じた。
 キラはすばやくそれを感じ取ると、瞬時に身をかわす。
 すると、それまでキラが立っていた場所に一筋の剣が伸びていた。誰かが、キラめがけて剣を突き出したのだ。

「!」

 キラは身をかわしながら、腰に挿していた大剣を抜き取り視界に入った剣をそれでなぎ倒す。
 そのせいで、キラを襲った謎の剣は屋上の床に鈍い金属音を立てながら落ちた。
 ところがその瞬間、すばやい動きで何者かがキラに向かって拳を繰り出した。
 キラがとっさにそれを避けると、その隙を見てその何者かが落ちた剣を拾って再びキラに切りかかってくる。

「おのれ、何者だ!」

 キラは大剣でその何者かの攻撃を交わしながら叫んだ。

 キラを狙うその何者かは、何故か顔が分からぬように鉄仮面を被っていた。
 出で立ちは、キラが身に纏っている異世界で主流の騎士用の衣装で、紺碧をベースにしたマントを背中につけている。
 キラとさほど変わらない身長、そして服越しに覗える体格からして多分、男。そして、キラと同等に渡り歩ける剣術スキルや、わりとスリムなのにパワー負けしない所を見ると、もしかしたら若いのだろうか。

 ――そんなキラの傍では、突然の戦いにより床に落ちてしまったエメテリオがやはり星を二つ浮かべて輝いていた。
恐らく、このキラを突如狙った男がキラが探している新たなる宝玉を所持しているのであろう。
 

 もしもスベラニア王国の者がこれを手に入れたとして、ならばせっかく手に入れたのに、何故国へ持ち帰らない?
 だとしたら、まさかこの男は我がルーン王国の――? では何故、自分を狙う。

「……」

 ――いずれにせよ、この男にここでやられるわけにはいかない。
 キラの振るう大剣と、鉄仮面の男が振るう剣が乾いた金属音を屋上中に響かせる。
 が、そうやって剣を交えている間の、一瞬の隙をついたキラにやがて軍配が上がった。

「せやあ!!」

 ――ヒュ!

 大剣を全身の力を込めて思い切り振り上げたキラは、一瞬の隙をついて鉄仮面の男の手にする剣を遠くへと弾き飛ばした。
 そして、あっという間に鉄仮面の男の懐に飛び込み、その仮面の鼻先にピタリと大剣の刃先を据える。
 完全に、勝負はついた。これで剣を仮面に突き刺せばキラの完全な勝利である。
 だがキラはあえてそれはせず――鋭い目つきで、そのままの状態で鉄仮面の男の次の動向を窺った。
 すると、

「……」

 鉄仮面の男が、そんなキラに対して片手を開いて見せた。
『参った』とでも言いたいのだろうか。
 だが、この男の正体が分からない以上、まだ油断はできない。
 キラはほんの少し刃先を自分の方へと戻したが、それでも鋭い眼光を保ちつつ、鉄仮面の男の様子を窺う。
 鉄仮面の男は、再び手を開いてキラに見せた。
 そして少しだけ今の場所より後ろへ下がり、静かにその鉄仮面を――外した。

「!」

 ――その瞬間、大剣を手にしたまま様子を窺っていたキラはハッと息をのんだ。
 鉄仮面を取った男は、静かに仮面を屋上の床に置く。
「……」
 キラと、その男の間に張りつめた空気が流れていく。

 突如現れた鉄仮面の男。そしてその仮面の下にあったその男の正体。二人は言葉を交わさぬまま、しばし無言で向かい合っていた。

 

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