幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season19-3

   

 氷室探偵社のメンバーに手を借りるために火守たちのようすを伺う。だが、どういうわけかこの日にかぎって依頼がゼロ。

 小柴ですらやる気がなく堕落していた。そんな惰弱な姿に氷室は憐れんだ。

 政治家と、警察からの依頼を氷室が一人で受けたが手が回らない。そこで二人一組の二班にわかれて調査をするといった。

 氷室と火守が政治家調査へ。御影と水桐と大地が警察調査へ。メンバーは決まった。ほかの探偵は今回は背をむけていた。

 御影はその態度にすこし憤慨するが、このあとべつの依頼が入るかもしれない。待機要員は必須だからしかたがないと認めた。

 メンバーは作戦会議をする。両方とも金についての汚職問題を晴らす、金がどういうふうに消えているのか、というのを調査するため氷室らは動く。

 とにかく御影たちの警察側は厄介だった。政木警部が動けない。探偵が自由に動いていいが、結局政木警部の指示で動くことになる。水桐はやや憤慨していた。

 警察側チームは嫌悪感がただよいそうな気配を御影は感じていた…

 

 探偵社内のメンバーをちらっと覗き見ると、氷室は驚愕の光景を目の当たりにした。

 火守、川上、水桐、大地、森谷、雲田、御影、全員そろって何もせずうだれていた。

「なんだこれは…」氷室はさすがに癇に障った。「小柴くん!」

 注意を促すも小柴ですら気が抜けていた。

「どうしたね?」氷室はこんな姿を見るのをはじめてだった。

「依頼がまったくないんですよ」小柴は感情をこめていった。氷室探偵を責めるようにだ。

 たしかにめずらしいことだった。これほど依頼がないことが考えられなかった。

「なぜだね、ここは日本の謎を解明できる名探偵氷室がいる探偵社だよ。依頼がこないわけがない」

「でもきません…」小柴は辛辣に即答した。

 静まり返る探偵社だった。表の“HIMURO・D”の看板もへそを曲げて傾きそうだった。

「まいったねぇ…」だがこれは好都合だ。個人的に2案件を同時に引き受けている。

 氷室は自分が抱えている依頼を手伝ってもらうことをメンバーに提案する。

 全員が氷室に向き直る。事務員も含めて周知報告だ。

「わたしを見てくれ、いいかい、大事な依頼を頼まれた。手分けして協力してもらいたい」

「いいですよ」火守が挙手した。

「これから二班にわかれて行動をとる」氷室は口角をあげて示した。

「二班…」水桐はぼそっとつぶやいた。

「なら俺は氷室班で」火守はいち早く挙手した。リスペクトしているのはこの男だけではない。

「俺も」御影はすかさず挙手した。

「待て待て、班はわたしが決める。政治班と警察班でわける。最低でもメンバーは二人一組で行動をすること」氷室はいった。

「氷室くん、申し訳ない」森谷がいった。「わたしはちょっと…」

 それはこの依頼は手伝えないと示唆していた。

「そうか、ほかにいないか?」

 川上、森谷、雲田は参加しない無言の挙手をした。

「どうしてですか!」御影は吠えた。それは氷室名探偵と共に依頼をするという偉大さを忘れてはいないか、と豪語する。

「全員がやるわけにはいかない。どういう依頼かはわからないが、適した者がついたほうがいいに決まっている」川上が理屈っぽくいった。

 雲田は無言のままだった。

「それも一理ある。たしかにほかにも依頼はくるかもしれない。来ないのは今だけで、やはり全員が行動するわけにもいくまい…」氷室は同意した。

 氷室と火守が政治班となり、御影と水桐が警察班となった。

「まぁ、私はいいけど…、御影くんのお守をするのが、ちと面倒だけど」水桐は苦言を漏らす。

「それはどういうこと? 最近じゃ俺だって活躍している」御影は誇示するようにいった。

「まぁまぁ、おまえら子どもじみた諍いはやめろ」火守はなだめるようにいう。

 閃光の眼差しが火守を差す。水桐のどぎつい眼光に言葉を失くす火守だった。

 御影はそれでも川上、雲田、森谷の三人は後方支援としても期待はしていたが、それすら背をむけたことに憤慨していた。

「あの、わたし、いる」

 大地は忘れられて癇に障ったようだ。自ら御影班に加わった。

「お姉さんたちに任せなさい」水桐は大地と肩を抱き寄せ御影をからかった。

「いや、俺がリードしていると思うけど…」御影は張り合った。

「生意気な口を…」水桐は目を細め、やや機嫌が悪くなっていた。

 大地は水桐側につく。同じ女流探偵だからそうなるのは無理もない。

 氷室は顔を引き攣らせていた。「じゃ、じゃぁ、これでメンバーは決まった。これから作戦会議をする。後ろ盾は頼んだよ、小柴くん」

「はい、わかりました」小柴はいつものような調子にもどり応じた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
-, , , ,


コメントを残す

おすすめ作品

プラチナ・フィンガー〜女王陛下のダイヤモンド〜<3>

見習い探偵と呼ばないで! Season9-5

巣鴨振り込め詐欺殺人事件、その3

見習い探偵と呼ばないで! Season8-3

見習い探偵と呼ばないで! Season10-4