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ファンタジー

DISCORD BRAKERS – 2 [ 6 ]

   

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

 割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

『グオオオオオオオ!!!』
 

 かなりの距離の向こう側に居た「鳥」が、おどろおどろしい声を上げて嘶いた。それと同時に、音楽室の窓がビリビリ――! と激しく震え始める。
「何!? 地震!?」
「きゃー!!」
 窓辺に居た皆がその振動に驚いて窓から慌てて離れようとするも、時、既に遅し。
 

『グアアアアアアア!!』

「鳥」は再びおどろおどろしい声で嘶くと、それと同時に自らの大きな羽をすばやく二度、動かした。すると、
 

 ――ドン!!

「!」

 まるで心臓を直接攻撃されたかのような、鈍くて重い衝撃が奏の身体を襲った。
 いや、奏だけではないようだ。その場に居た全員がその感覚に襲われたようで、全員バランスを崩して床へと倒れてしまう。

 ――急激に身体を襲ったその感覚、奏には身に覚えがあった。
 そう、この身体の感覚。キラが「星陵スカイタワー」の中で宝玉回収のために時間を止める魔法を口にした後感じた、あの感覚と同じだ。
 まさか、あの「鳥」が!? 今のあの変な鳴き声が、魔法の詠唱とやらなの――? 鳥の嘶きにしか聞こえなかったのに!!

「いててて……」

 奏は床に一旦倒れた自分の身体を、ゆっくりと起き上がらせた。念のため手足を動かしてみると――何とか動けそうだ。
 奏は、そのまま隣に倒れたさやかを揺り彼女も起こそうとする。しかし、

「きゃっ!」

 なんとさやかの身体は、いやさやかだけではない。窓辺に一緒に居て同時に床に崩れ落ちた皆の身体は、呼吸さえもしていない状態のまま、動かない。
 目も開いたまま、呼吸もしないまま――かといって死んでいるわけではなく、体温もそのままの状態だ。

 奏は壁の時計へと急いで目をやった。

 時刻は、午後三時四十分二十三秒。
 ――何秒見つめても、時計の秒針はそこから動くことが無い。つまり、「鳥」のあのおどろおどろしい嘶きと共に、この世界の時間が止められてしまったのだ。

恐らく、「もう一人の奏」でありルーン王国の者であるキラとリンクしている奏は、完全ではないにしろ、魔法に対する耐性も彼とリンクしていて、「星陵スカイタワー」のときと同様、魔法がかからなかったのだろう。

『シャアアアア……!』

 そんな奏を、「鳥」は、窓越しに確実に捉えていた。そして、フワリ――と屋上からゆっくりと浮かび上がり始める。恐らく、奏の元へと飛んでこようとしているのだろう。
 

 ――あんなおどろおどろしい声で鳴く「鳥」が、キラの仲間とは到底思えない。奏はごくり、と息を飲み込んだ。
 それに、わざわざこちらの世界で奏の姿を探し出した、ということは――もしやメアの仲間か。キラを最終的に倒す為に、まずはその「もう一人のキラ」である奏に目をつけたとか。確かメアも、戦いの最中、何度も奏を狙ってきたっけ――!
 魔物のくせに、なんて勘がいいんだろう。
 確かに、「音律の魔術師」ことキラを狙うよりも、無力・無知識・平々凡々な奏を狙った方がキラへのダメージはデカい。
 あんな鳥のくせに、鳥のくせに、鳥のくせに――! 奏はブルリと身体を震わせて、自分を捕らえる「鳥」から目を逸らす。そして、
 

「ど、どうしよう――! に、に、逃げないと――!」
 早くキラにこのことを伝えないと! ていうか、絶対にあの気配に気づいているはずだし、早くキラに合流しないと!
 奏は、急いで自分の荷物の中に忍ばせていた例の魔法ステッキを取りに戻ろうとするも、恐怖で足が竦み、バランスを崩してその場所で転んでしまう。
「鳥」はそんな奏を完全にロックオンしたのか、

『グアアアアアア!!!』

 再びおどろおどろしい声で嘶いたかと思うと、大きな翼をピン、と真っ直ぐに平行にし、猛スピードでこちらに向かって飛んできた。

「い、いやああ!」
 奏は何とか立ち上がり、かばんの中の魔法ステッキを掴む。
 しかし「鳥」はかなりのスピードでこちらに突進しており、竦んでいるままの奏の足では、到底逃げ切れそうに無い距離まで来ていた。
 しかも近づくにつれてその「鳥」の顔も確認できるようになってきていたが、鋭い牙にぎらぎらとした赤い瞳。口からは緑色の霧のようなものまで噴出している。

 ――殺される!

 奏を襲う恐怖は、先日のメアとの戦いの比ではなかった。諦めたくはないけれど、キラに合流する前に「鳥」にやられてしまう感はどうしても否めない。
 奏は魔法ステッキを握り締めながら、思わずぎゅっと目を瞑った。

 

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