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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第14話「見上げた星に集う光」

   

キールは、見抜いていた。エリザの抱く孤独を。

「この子なら、私を責めてくれるだろうか」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

新章 第14話「見上げた星に集う光」

 

 
 この子は、私を責めるだろうか。
 この子なら、私を責めてくれるだろうか――――。

 私の愚かな願い。それを跳ね除けるように、キールは私を真っ直ぐに見つめて、言葉を紡いだ。

「ほら、まただ」
「え…」

 冷たくなった彼の指先が、私の頬を突いた。

「姉ちゃん、また一人ぼっちの顔してる」
「! どうして…そんなこと」

 私はルイスを失い、シアンと離れたあの日から、彼の言う通り一人ぼっちだった。何をしていても、どこにいても、私は遠くを見ていた。今のままでは届かないルイスの居場所を、ずっと見つめ続けていたのだ。キールはそのことに気がついていた。私の孤独に――――私の否定に。

「姉ちゃんは一人じゃないよ」

 ――――私は、何がしたかったのだろう。こんなにも幼い子供に諭されなければ、自分の気持ちにも気づけない。

 シアンを奪ってしまったことを詫びたかった。心の底から、弟である彼に謝罪したかった。――――違う。私は、彼に責めてほしかったのだ。許さないと、そう言ってほしかった。そうすることで、この温もりから抜け出そうとしていたのだ。
 一人でいることは恐ろしい。だが、一緒にいることによって、失うかもしれないという恐怖に囚われる方が、もっと恐ろしいから。
 罪悪に包まれ、笑顔に蝕まれていた私の心に、海から漂う潮風が染み渡っていく。

 大きな瞳から涙を溢れさせる少年を見て、私は首を横に振った。

 私はいずれ、この島から出て行く。それは少なからず、近い未来に。

「一人にならないで。姉ちゃん、お願い」

 キールは私にそう望む。だが、私はルイスを見つけるその日まで、一生一人ぼっちのままなのだ。
 ――――温もりに溺れるな。目標を見失うな。決して、失うな。
 私は自分にそう言い聞かせて、キールを抱き締めた。私よりも一回りも幼い体を抱き締めて、その背を撫でる。

「わかったから泣かないで、キール」

 宥めるようにそう言った私の手を振り解き、彼は私の肩を掴んだ。

「姉ちゃんは、誰かを大切に出来る人なのに、どうして自分を大事にしてあげられないの!?」
「ッ」

 胸が打たれるような思いだった。少年の切なる言葉が、私を叩く。撫でる。抱き締める。
 その言葉の奥に、ルイスが見えた。私を案じ、守ってくれた彼の言葉が幾つも蘇る。兄様を恐れたこともあった。底知れない彼の殺意に、身を焦がされそうな思いもした。だが、いつだって彼は、私の為に生きていた。そんな彼に、私もかつて叫んだのだ。願ったのだ。己を大事にしてくれと。私は今、キールにあの時と同じ言葉を言わせている。

「キール…!」
「シア兄だってそう思っていたはずなんだ! 姉ちゃんを守るって決めて、守り通したのは、他の誰でもないシア兄の意思だ! 姉ちゃんは悪くない。だから――――」
 

 

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