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ハートフル

お仕事です! 第2章:樋渡和馬VS 夜明けの逃亡者-1

   

 派遣コーディネーター、目指すはプチニート達の星!?
 

 就職活動が上手く行かず、無職プチニートになりかけていた僕・樋渡和馬が見つけたのは、「派遣コーディネーター」という仕事だった。
 面接される側だった僕が、面接する側になる――それだけでも刺激のある毎日だと思っていたけれど、面接希望でやってくる人々は十人十色・百戦錬磨の強者ばかり!?

 これはそんな新人・コーディネーターの僕と、僕の教育係で通称「おてんとさん」こと天道凪子の仕事奮闘記である。
 

 樋渡和馬、ニートたちの星になるべく奔走す! ついでに試用期間の二か月間も乗り切れ、和馬。

 

 僕が子供の頃に読んだ童話の中に、「北風と太陽」という話がある。
 北風と太陽が、「どちらが偉いのか」を決めるため、たまたまそこを通った旅人の上着をどちらが脱がすことが出来るかを競う話だ。
 結果的には暖かい日差しで旅人を照らした太陽に軍配が上がるわけだけれど、結局のところこの話の教訓は「何をやるにもそれぞれに合った方法がある」ということだ。
 これは、当然ながら洋服を脱がすことだけにはとどまらない。人の心を開くことにも十分当てはまる。心を閉ざした人間をただただ怒鳴り飛ばして、叱りつけても余計に心を閉ざしてしまう。勿論甘やかしてばかりではだめなのだけれど、時に甘さ、そして頃合いを見て厳しさ。両方を織り交ぜて、その人に合った方法でコンタクトをする。それが一番重要ということだ。

 ――そんな、子供の頃に読んだ話。
 その話が、将来自分の仕事にも大きく関係してくるなんて、思いもしなかった。
 でも、十人十色、百戦錬磨の強者どもと渡り合うには絶対に忘れてはいけない話でもある。

 僕は彼らにとって、「北風」なのか「太陽」か。それは、「おてんとさま」のみぞ知る?

「あれ? 天道さん、いないんですか?」
 ハートフル人材派遣会社に入社して、はや二週間。
 初日に「チョビヒゲ」(登録者その1)と天道さんとの対決を目の当たりにし、本当にここでやっていけるのかどうか不安になった僕だったけれど、初日のインパクトが強すぎたせいで、その後様々な登録者がやってきてもそれほど驚かずに業務をこなせた僕。今では四苦八苦しながらもようやく一人で面接が出来るようになり、会社にも慣れ始めた。そんなある日の朝のこと。
 いつもは僕よりも先に来てデスクで書類整理している天道さんの姿が、その日はなかった。お子さんもいるようだし、今日はお子さんが体調不良とか、行事か何かでお休みなのだろうか。あれ、でも勤務状況が分かるホワイトボードには休暇って書いてないけどなあ。僕はそんなことを思いながら、オフィスの隅でコーヒーメーカーをセットしていた静江さんに質問した。すると、

「凪ちゃん、今日は朝から大変なのよ」
 静江さんから予想外の答えが返ってきた。

「大変て? ああ、お子さんまだ小さいんですよね。季節の変わり目は、風邪もひきやすいですからねえ」
 体調不良とかでお休みですか? 僕が何気なく尋ねると、「いいえ」と静江さんは答えた後、
「寮生の一人が逃亡したのよ」
「とっ……はあ!? な、何ですか、逃亡って」
「逃亡は逃亡よ。まあ、またの名を『プチ失踪』っていうんだけど」
「失踪って――一大事じゃないですか! プチ、とか付いて何となく可愛い感じをアピールしているけど、全然可愛くないし、失踪は失踪でしょ!? ま、まさか天道さん、警察に――!?」
 聞きなれない言葉に驚く僕に、静江さんは「まあ座りなさいと」と僕を席に座らせてから、簡単に事情を説明してくれた。

 

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