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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season19-5

   

 氷室がにらんだのは小宮山議員の右腕となる多比良氏だ。この人物に話しを伺いに小宮山議員の事務所に出向いた。

 多比良は勝手に中原が名探偵に依頼をしてしまった。その報酬は彼からもらってほしいといった。自分が関与していないからと主張した。

 二言三言話しただけで氷室は去った。重要な話もせずに中原のことをただ伺っただけだ。

 しかし御影並みのプライベート・アイで洞察、観察といった具合に氷室のもうひとつの能力が発達していった。

 まさに完全無欠の名探偵に開花したように火守は脱帽だった。
 
 

 御影らと政木警部がいる応接室にノックをする者が現れた。黒川刑事だ。

 すると以前から妙な男が警視庁に出入りしているのを伯田警部補がにらんでいた。

 単なる清掃員だが、業者に問い合わせるもそのような人物はいないといわれた。

 名前もいかにも偽名だとわかる。

 その人物が写っている写真を御影たちは一見する。

 御影はどこかで見た記憶があるようにいうが、水桐と大地はハンサムな男前を一度みたら忘れない、と揶揄した…

 そして、御影に突如頭痛が襲う…

 

 多比良氏を訪ねるため、小宮山議員の事務所にアポイントメントなしでむかった。飛び込みの探偵相手では追い返されるだろう。だが、日本を代表する名探偵氷室ならそうはいかない。しかも今回、依頼されている身だから、あいさつにきたといえば話はまかり通るだろう。

「これはこれは探偵さん、まさか中原が依頼をしていたなんて勝手な若者だ」愛想笑いを浮かべている多比良だった。

「彼は独自でわたしに依頼をしてきたってことですか?」

 氷室と火守は事務所の執務室に案内されソファに座り対面している。

「えぇ、そうですね。だから無駄骨ですよ。仮に小宮山先生の疑いが晴れるようなことがあっても報酬は中原からもらってくださいね。もっとも先生と話しが通っているのであれば私が関与すべきことではありませんが、反対もしませんのでご安心を…」温かみのある微笑みを浮かべる多比良だった。

 これで報酬については安泰だ。

 といいたいが、氷室は中原がどういう状態であるか、多比良はしっているはずでは。

「こちらの事務所の方たちは普通に仕事をされているようですね」

「そうですよ、どういう意味ですか?」多比良は首を傾げた。

「しらないわけないでしょ」火守が口を挟んだ。「中原が収賄容疑の犯人にすりかわったことに慌ててないですね?」

 多比良は微動だにしていない。

 もちろんこのとき氷室の眼光は多比良の全身の空気まで見逃さない。

「どうお考えで?」氷室はいった。

「はぁー、たしかに残念でならない。小宮山先生の疑いが晴れたと思ったら中原が犯人だったとは…、でもしっかりとそのことは受けとめて彼には罪を償ってもらいたいと思います」多比良は意気揚々と得意げにいった。

『こいつぅぅぅぅー!』と氷室と火守は感じた。

「そうですか、わかりました」氷室は同じように笑みを浮かべて失礼した。

 探偵二人は車に乗って去っていった。

「いいんですか、中原の居場所を聞かなくても?」火守が助手席でどこか不満を抱えるようにいった。

「これでいい。どうせしらんだろ。むしろ捜しているのは多比良氏ではないか。どうやらピースは残りわずかになってきた」氷室は核心を得ていた。

「どういうことですか? あれだけの会話でなにがわかったと?」同様の能力だというのに、火守は見えても感じてもいない。

 集めた“証拠”をパーツとしてパズルのように嵌めていく氷室タイプ。

“パズル・インシュイション”。直感による組み合わせ。分析と計算から成り立つ。

 火守は同様の能力でも格差があるようだ。

「多比良氏は嘘つきだな…」

「あの笑み、あれは嘘をつく笑みだ。頬の硬直と若干の瞳孔の動揺が見えた。その瞳の奥は暗躍が潜んでいた。犯罪に加担している、もしくは首謀者の目だ」

「長年、重犯罪に携わって解決してきた探偵の目ですよ。御影のようなプライベート・アイが氷室さんにも開花してきたという感じに聞こえます」

「ふふふん…、そうか?」初めて自嘲するような笑いをした氷室だった。

「御影くんのおかげかな。これまでにないタイプだったから、それに触れて感覚を感じたからだろう。わたしの能力のもうひとつの秘密だ。相手の優れた能力を吸収する。それが“二つ目の能力”だ」

 氷室はその能力を誇示した。命名しているようではないが、火守より優れているのはそういう吸収力があるからだと悟った。

「負けるわな、そりゃ…」

 

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