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SF・ファンタジー・ホラー

DISCORD BRAKERS – 2 [ 7 ]

   2017年5月16日  

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

 割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

ヒュンッ――
 

何かが、奏の耳元で素早く風を切るように動いた。その直後、

『グオオオオオ!!』

奏に向かって真っ直ぐに飛んできていた「鳥」が、物凄い勢いで奏とは別の方向に吹き飛ばされ、崩れかけていた渡り廊下の壁へとぶつかる。
そのせいで渡り廊下は完全に崩壊、地上4階の高さだというのに、奏は瓦礫と共に地面へ落下しそうになる。

そんな奏を、誰かがふわり、と抱き上げて――瓦礫を避けるようにして宙を舞った。
まるで、ジェットコースターで急激に高いところから低いところへと落ちていくような足の竦む感覚に、奏はぎゅっと身体を縮めこむ。
ほどなくして、奏の身体は瓦礫とは別の場所に安全に、地面へ運ばれた。
奏は瞑っていた目を開けて改めて周りを見る。そこには――見慣れない衣装に身を纏い、そして先日同様に大剣を握っているキラがいた。
どうやらキラが例の「鳥」を剣で吹き飛ばし、崩れた渡り廊下から奏を抱き上げて外へ飛んだらしい。

「キラ!」

その服どうしたの? という疑問はさておき、危ないところを彼に助けられた安堵感から彼の名を叫ぶと、

「奏、大丈夫か? 怪我はないか」
「わ、わたしは大丈夫。そ、それより廊下に――!」
奏は、すでに跡形もなく崩れ落ちてしまった渡り廊下を指差して叫んだ。

そう、あの廊下には奏以外にも伊織も居たはずだ。彼はどうしたのだろう――まさか、あの崩れ落ちた瓦礫の中に!? 奏が真っ青になってキラを見ると、

「彼は大丈夫だ」
「え? ど、どうして――」
「詳しいことは後で説明する。それより奏、私がモノスを退治するから、またこの間のように私をサポートしてくれ」
「え!? さ、サポートってまさか――」
「再びその魔道具で魔法を放ち、モノスの動きを止めてくれ」

キラは奏に向かって真面目な顔でそういい捨て、ゆっくりと崩れ落ちた瓦礫のほうをみつめた。
瓦礫の中からは、吹き飛ばされて地面に叩きつけられた「鳥」――キラは「モノス」といっていたが、モノスが獰猛な牙をむき、そして紅の瞳をギラギラとさせてこちらを見ていた。

奏のことを先ほど狙っていたときとは違い、遥かに醜悪で、そして――殺気だって居るように見えた。
戦いに素人で、このモノスという鳥の魔物を良く知らない奏でもそう思うのだ。キラにしてみれば、それを身体いっぱいに感じていることだろう。

キラはモノスと少しの間だけ対峙すると、やがて大剣を構えてモノスめがけて走り出した。
それと同時にモノスもキラに向かって飛び掛り――二人は「不協和音」を奏でながら、空中で激しい攻防を繰り広げている。

そんなキラを見つめつつ、奏はキラに言われたとおりに魔道具、こと例のオモチャの魔法ステッキを両手に握り締める。

――キラは簡単に『又この間のように』とか言っていたけれど、一昨日以来使う機会も無かったし、一晩寝て消えた、とかない――とは思うけれど。
使いすぎでしばらく使えない、とかないよね? 魔法、ちゃんと使える、よね?

そう、目の前でモノスと戦っているキラに比べると随分とレベルの低い事で悩んでいるように見える奏だけれど、奏にとってそれは最重要項目だ。
しかし、悩んでいる暇はない。モノスとの戦いにキラに勝ってもらって皆を元に戻してもらう為にも、何か手伝わなければ!

「ええと……出ろ、でろでろ。出でこい、魔法……」

そして奏は、例の言葉を呟き始めた。
相変わらず、ナンセンスでそして情けないことこの上ないが、これが今の奏の「詠唱呪文」である。
この件が片付いたら、何かイケてる魔法詠唱ポーズとか呪文とか考えてみようかな? 魔法少女アニメのように――奏はそんなことを思いつつも、前回の時と同じように、おもちゃのステッキを握りしめながら、魔法を出すことに集中した。
しかし、
「あ、あれえ……?」

必死に祈ってみたものの、出てきた魔法は、ステッキの先に指先ほどの大きさの光だった。
試にキラに向かってその魔法の光を投げる素振りをしてみるも、なんとキラにまで届かず、ヒュルルル――と地面に落ちてあげく消えてしまった。これでは、サポートどころの話ではない。気を取り直して、と奏は再び念じようとするも、

『グオオオオ!』

片や、狂ったように叫び、そして大きな翼で宙を舞うモノス。
羽が時折奏に向かって飛んでくることもあり、魔法を出すことに集中したいにも関わらず、奏はその羽を避けるのに精一杯になってしまう。
離れた場所に居れば集中できるかもしれないが、離れすぎていると奏の出力する魔力では到底届かない。でも近くに居たら、集中できず、尚且つ詠唱中に危険が及ぶ可能性もある。
一体どうすれば――奏はどうにもすることが出来ずに一人、気ばかり焦っていた。

と。

 

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