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ラブストーリー

残念女子は、それでも恋を諦めない 1

   

恋愛に対して奥手・苦手な小笠原 結愛。そんな彼女が、急きょイケメンの双子と同棲することになった!?
三か月間の期間限定とは言っても、同棲が学校にばれたら即退学!
ヒミツの同棲を、結愛は何とか乗り切ることが出来るのか?

 

「お父さんな、仕事で海外にしばらく行くことになりそうなんだ。それで大切な話があるから、今夜八時に必ず家に居るように」
 普段から仕事で家を空けることが多いお父さんからのLINEメッセージを既読にしたのは、指定された時刻のほんの数時間前だった。
 よく見ると、私へのメッセージ送信があった日時は三日前。
 三日も反応をしない私のことは棚に上げておいて、送ったメッセージに「既読」通知、もしくは返信がないのに何も反応を示さないところを見ると、お父さんも相当ノンビリ屋なのか私に興味が無いか、どっちかだ。

「八時に必ず家にいろって。言われなくても毎日居るわよ」

 ようやく既読にしたそのメッセージに向かって、私・小笠原 結愛はため息混じりにぼやく。

 私、小笠原 結愛は子供の頃にお母さんを無くした関係で、現在はお父さんと二人で生活をしている。
 とはいえ、お父さんは貿易商を営んでいる為、週の半分は家を留守にすることもある。
 流石に子供を一人にして出ていくわけにはいかないので、私が中学生くらいまではお父さんの妹、叔母さんがよく家に来てくれていた。でも私が高校生になる時、旦那さんの都合で遠くへ引っ越ししてしまい、現在はお父さんの留守中は私一人だ。

 そんな状況だと、防犯上あまりよろしくないのでは。大抵の人はそう思うかもしれない。
 でもそこが我が家――というか、うちのお父さんは違うというか、うちの大きな特徴の一つ。お父さんは年頃の私が一人で家で過ごすことについて、さして心配はしていないようだった。というのも――

『全日本学生女子空手選手権三年連続優勝』

 実は私、そんな輝かしいタイトルの所持者なのだ。お母さんを亡くしてから、生活のためとはいえ、お父さんにあまり構ってもらえない寂しさ。この生活に慣れるまでは、いくら叔母さんが面倒見てくれていたとはいえ、結構塞ぎごみがちだった。口数も減って、たしかあの頃は学校も休みがちになっていたっけ。そんな私に、
「ねえ、結愛。気分転換で身体を動かしてみない?」
 叔母さんが、家のポストに投函されていたあるチラシを見せてくれた。それが――私と空手との出会いだった。
 それ以降、根が真面目だった(と思っている)私は空手に打ち込むようになって、気がついた時には中学三年間、無敵の女子空手日本チャンピオンになっていた。

 ただ、そうやって過ごしたのは中学まで。周りの友達にもちらほらと彼氏がいる子も増えてきたし、遊びに誘われることも多くなった。なので高校進学と同時に私は空手を辞めて、いわゆる花の女子高校生生活を満喫してやろうと意気揚々だった。
 幸いなことに、空手をやっていたおかげでスタイルはそれなりに良い。腕が立つことさえ隠していれば、男子もホイホイと寄ってくるはず。
 中学時代の空手チャンピオンの私を知っている男子は、今の高校にはあまりいない。ということは、「理想の高校生活」を送るチャンスがあるということ。
 実際、高校入学して早々に男子生徒に告白される機会があった。でも、

「小笠原さん、俺と付き合っ……うわー!」

 告白×乙女×理想のシチュエーション。
 それなりに外見の良い男子生徒から、いわゆる「壁ドン」をされての告白、という夢のような状況に見舞われた私だったけれど――悲しいかな、格闘家の性。
 相手が壁ドンをするべく私の顔のすぐ横に腕を勢いよく延ばしてきた瞬間、あろうことか私は本能的にその腕を取り、男子生徒の身体を投げ飛ばしてしまった。
 格闘女子の本能、恐るべし。もはや笑いごとではない。
 しかも私はこの「壁ドン男子投げ飛ばし事件」に留まらず、「耳つぶドン」をしてきた男子生徒にも同じことを仕出かし――あっという間にその噂は広まって、それ以降私に言い寄ってくる男子生徒は居なくなってしまった。
 高校入学から、一か月で恋愛については絶望的になった、というわけだ。

 この出来事について、女の友達からは爆笑されて今でも笑い話にされているし、学校の男子生徒には倦厭されている。
 故に私にとって「恋愛」「告白」「素敵なお付き合い」は酷いトラウマとなり、「結愛は可愛いのにホント残念ね」という残念女子の不名誉称号までもらう始末だった。

 そんなこんなで、依然として腕は立つものの、彼氏の類がいない私は、清く正しい高校生活を送っているわけで。
 アルバイトは休日月に四回程度、ファーストフード店で接客。平日は、学校の図書委員として放課後は図書室で過ごすことが多かった。
 ――だから、夜八時に家に居るように、なんて、いつもの私を知っているなら釘を刺さなくても当然な事。
 でもその「当然」が分からないというのは、やっぱりお父さんは私の生活リズムなんて興味がないのだろうか。
 忙しいからしょうがないのかもしれないけれど、やっぱり少し寂しいな。
 お父さんから送られてきたLINEのメッセージへ再び目を落としつつ、私はため息をつく。

 大事な話って、何だろう。海外に行くのに、一緒に連れて行ってくれるとか、かな。
 それならそれで、ちょっと嬉しいかな。今までは結構放置されていたわけだし、これから一緒に過ごす時間が増えるなら、お父さんとたくさん話ができるかもしれないし。
 ――それに、今の高校にいても彼氏は出来そうにないし。海外の男の子なら、私のことは知らないから恋愛トラウマを克服するチャンスかも。

 私はスマホの時計表示を見た。時刻は午後五時。約束の時間まであと三時間だ。
 今はまだこうして学校の図書室に居るけれど、数時間後にはお父さんが数日ぶりに家で待っている。
「転校かあ……英語、そんなに自信ないんだよなあ。あ、英語じゃない国かもしれないか……」
 窓辺の席に腰掛けながら、私は自然とため息をつく。そして、図書室が閉室になる時間ギリギリまでそこで過ごしてから、約束の時間に合わせて帰宅したのだった。
 
 

 

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