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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第15話「お伽噺」

   

エリザは、シエロから衝撃の事実を聞かされる。

「――――天使の少女は、姫君であった。」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

新章 第15話「お伽噺」

 

 

***

 師匠から渡された本は、彼の言った通り、お伽噺だった。一見して、普通の絵本。ありふれた物語の一つに思える。だが、彼はこれを『過去の話』だとそう言った。それには何か理由があるはずだ。

 実在した人物の話なのかそれとも、空想の伝説か。いずれにせよ、読んでみないことには何とも言えない。
 私はベッドの上でシーツを引き寄せた。何かに触れていないと不安が襲ってくる。

「…でも、師匠はどうしてこの本を私に…?」

 そう疑問を抱きながらも、私はページを捲っていくことにした。淡々と書かれている文字と稚拙な絵は、やはりどこかで見たことがあるような印象を受ける。

「お伽噺だもの……見たことがあってもおかしくはないよね」

 そう自分に言い聞かせながらも、私は浅い呼吸を繰り返す。そして、数ページ捲ったところで、この物語の主人公が現れた。美しい一人の少女だ。
 ――――人間とは比べ物にはならないほどの美貌。気品に溢れたその姿。涼やかな声。神に愛された存在。そう記されていた。
 どうやら彼女が、この物語の『英雄』に当たる人物らしい。

「もしかして…これって…使の話…?」

 私は目を見開いた。
 これは人間の物語ではない。神に近い者の伝説だ。

「一体、何なの」

 私は震える指先で、文字をなぞっていった。
 この絵本が刻んでいるのは、二人の天使とその末路に纏わる物語だ。

 私は深夜だということも忘れて、その絵本を読み進めていった。食い入るように文字を読み、絵を見つめる。古びた紙を捲る度、私は妙な感覚に陥っていた。

 巻き戻る。進む。巻き戻る。進む――――
 そんな不思議な時の流れを感じたのだ。

 跳ねる心臓を無視して、私は物語の世界へと入り込む。
 
 

 ――――天使の少女は、姫君であった。
 天使と精霊、神に愛された者だけが暮らす、豊かで穏やかな帝国の美しく清らかな王女。彼女の周りには常に笑顔が溢れ、それは国全体を照らしていた。そしてそんな彼女の隣にはいつも、許嫁いいなずけの王子が傍にいたのだった。

 だが、平和な日々は突然に崩れ去る。王子が不在の隙を狙い、人間の兵士達が天使の国へ攻め込んできたのだ。彼等の長寿の血と神秘的な力を求めて――――。

 欲に目の眩んだ人間達は、次々と天使達を殺していった。残酷に、凄惨に、その命を奪っていく人間達に対して、姫は恐れず剣を取り、勇敢に立ち向かった。そして、天使の象徴とも言える純白の翼――――自らの羽と引き換えに、逃げ惑う民達を救ったのだ。

 生き残った者達を国の外へと逃がした後も、彼女はただ一人、戦場と化した国に残って最後まで戦い続けたが、羽と共に全ての力を失ってしまった彼女は、駆けつけた王子と共に人間達に捕らえられてしまう。

 幾多の天使を従え、最も神に近い存在であった姫。その偉大な力を欲し、人間達は――――生きたまま、彼女を喰らった。王子の目の前で、天使の肉を

 こうして、身を挺し、民を守った偉大な姫は死に、愛する姫を失った悲しみの中で、王子も息絶えた。

 

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