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SF・ファンタジー・ホラー

DISCORD BRAKERS – 2 [ 8 ]

   2017年5月23日  

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

 割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

「キラ様!」
それまで奏の盾になってくれていた、謎の青年だった。彼は驚くくらい大きな声でキラの名を叫ぶ。そして、
「待っていてください、キラ様! 今こそ、僕の力で! 僕が貴方を救います!」
そう続けて叫んだかと思うと、スッ、と目を閉じて手にしている剣をまずは水平に構えた。そして大きく深呼吸をした後、ゆっくりと何かを唱え始める。
それは、キラが魔法詠唱をする時と同じ、普段耳にすることがないフレーズの言葉。ということは彼が唱えているのは――魔法の詠唱呪文なのかもしれない。

この人も、もしかしてキラみたいな魔法を使える!? しかもキラの事を「キラ様」と呼ぶということは、まさかこの人、ルーン王国というところからやってきたとか? しかも雰囲気的に、キラの仲間の可能性が高い。これは、何とかなるかもしれない!――奏はそんなことを思いながら、じっと状況を見守っている。
そうこうしている内に、謎の青年は呪文の詠唱を終えた。そして今度は剣を両手で天に突き上げるかのように動かすと、

「――音律魔術で守られし天の恵みを、我が守るべき戦士へ! ヴァッサ・テンペストーゾ!」

と叫んだ。
その瞬間、それまでそんなものどこにもなかったのにもかかわらず、突如瓦礫だらけの地面から、大量の水で出来た「槍」が無数飛び出てきて天高く舞い上がったかと思うと、動き回っていたモノスへと降り注いだ。
槍は、青年が剣を振る方向から大量に現れては、どれもこれもがモノスを確実にとらえ、水の矛先でモノスの身体を貫いていく。
そう、それはまるで指揮者がタクトを動かすよう。青年が剣をタクトのように動かしては、水の槍を自由自在に操っているのだ。
「綺麗――」
――先日、キラが七色の光を放つ剣で闇を舞う時に感じたのと同じだった。
戦いの最中にそぐわないかもしれないが、まるで華麗な舞を舞っている、そして美しい音楽を奏でている指揮者のような青年の姿に、思わず奏は声を漏らす。彼が超絶イケメンであるから、それは猶更だ。

――水の「槍」は、まるで意志を持つかのように何度も何度も、モノスを貫いては再び天へと舞い上がり、また翼を貫くために地へ降り注ぐ。
 

『グアアアア!!』

それを何度も繰り返している内に、翼を大量の水の槍で幾度となく射抜かれたせいか、流石のモノスもその動きを止めてついに地面へとひっくり返る。キラはその瞬間を見逃さなかった。

「音律魔術の名のもとに、お前を浄化する! チューン、ジャジメント!!」

先日メアをそうした時のように。キラは七色に光り輝く大剣を大きく振り上げると、モノスめがけて全力で振り下ろした。
『ギャアアアアア!!!』
キラに勢いよくその身体を真っ二つに切り裂かれたモノスは、断末魔の声を上げながら、緑色のおどろおどろしい液体をその身体から噴出させていた。そして、どす黒い煙と共に――その姿を消した。
するとその瞬間、崩れ落ちた渡り廊下も、破壊された校舎も、元に戻った。
――ドン!
激しい胸の鼓動と共に、モノスによって止められていた時間も元に戻る。
これも、先日のメアとの戦いの時と同じだった。
「ぐっ……」
例の如く体力が無い奏はかなりの肉体的負担を感じるも、前回よりは魔法を打つ回数も、精神力も使わずに済んだので辛うじて立つことは出来た。それに今は倒れている場合ではない。奏には、キラに聞きたいことがたくさんあるのだ。
「キラ!」
「奏! 大丈夫か? 今回も助かったぞ」
「キラ! 教えて欲しいんだけど……!」
そんな中、戦いを終え、普段通りの柔らかく人懐っこい笑顔に戻ったキラが、奏の所へと駆け寄ってきた。奏はさっそくキラに駆け寄りながら話しかけようとしたのだが、奏がキラと話をしようとするその前に、
「キラ様! ご無事で良かった!」
「きゃ!?」
――何故か例の謎の青年が、そんな奏とキラの間に強引に割って入ってきた。しかも青年、キラには笑顔を見せるのに、何故か奏のことは一瞥だけして、話しかけようともしない。寧ろ、今にも舌打ちをしそうな印象さえ受ける。
な、何なのよこの人――! 奏が少々むっとしながらその青年を見ると、
「ああ、そういえば奏は初めて会うんだったな。また後で詳しく話すが――彼は、アル。アルトゥール=バスラー。ルーン王国の近衛騎士団で、私と共に国王陛下の為に働いていた近衛兵の一人だ」
「! やっぱり!」
「そして――」
キラは自分にぴったりと寄り添っている青年を簡単に奏に紹介する。そしてその後、奏の後ろに立っていた伊織を指さし、
「彼が、もう一人のアル――つまり、アルと彼は私と奏のような関係のようだぞ?」
「――ええ!?」
キラの話に、奏は絶句する。そんな突然の事に驚き声が出せない奏に対し、伊織が優しく説明をする。
「僕もさっきそれを聞いて驚いたんですよ、藤崎先輩。昨日うちの道場に来たときは、ただの留学生って聞いていたんですが――」
「もしかして、伊織くんの学年に来るって話だった留学生って――」
「ええ、彼だったんです。昨日の時点では分からなかったんですが、今朝クラスに編集してきたのでそれで知りました。別にそれはそれで気にも留めていなかったんです。でもさっき、キラさんが藤崎先輩を抱き上げて外へと飛んだ時――」
伊織はそう言って、その時の事を奏に説明する。

 

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