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SF・ファンタジー・ホラー

DISCORD BRAKERS – 2 [ 9 ]

   

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

 割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

その日の、夜。

「アル! さあこれを食べてみるのだ! この琥珀色の魔法の液体は、至極の味なのだぞ!」
「はい! キラ様!」

藤崎家のリビングには、奏とキラの他に、アル、そして伊織がやってきていた。部活後に落ち合った奏たちは四人で話をする場所を探していたのだが、外で話すと誰に何を聞かれているか分からない――ということで、急きょ藤崎家で夕食を食べながら話をすることになったのだ。
幸いなこと――なのか、キラが例の魔法で意図的にそうさせたのかはわからないが、奏の両親は二人で出かけてしまったので留守。夕食は準備をしていてくれていたようなので、奏たちはそれを味わいながら落ち着いて話を始めた――のだけれど。
そんな中、キラがアルに早速ハチミツ料理を薦めていたのだ。ちなみに今夜のキラは、ロールキャベツとピーマンサラダに大量のハチミツをかけていた。
「……」
若干吐き気を催しそうな奏を余所に、キラとアルはきゃっきゃと騒ぎながらハチミツ料理を堪能している。もはや、どっちサイドが女子高生なのか分からない。
「藤崎先輩、ルーン王国の方々は味覚が変わっているんでしょうか?」
――流石に伊織もそれに気が付いた、というか目の前で繰り広げられる異様な食事光景に、奏に耳打ちしてくる。
「……そうね」
奏にとっては既に見慣れた光景ではあるけれど、日にちが経っても、どうにもこうにも理解に苦しむこの光景。絶対に我が町のはちみつ消費量は、近い内に全国一になるはずだわ、と若干の頭痛を覚えつつも、奏は今までの情報を自分なりにまとめて皆に話し始める。
そう、忘れてはいけないのが、今日は楽しい夕食会の為にここに集まっているわけではないのだ。まずは情報の共有と状況確認をしなければならない。

――ルーン王国から飛び出した三つの宝玉のうち、赤い宝玉(火の宝玉)は奏のオモチャの魔法ステッキに相変わらず張り付いている。
水の宝玉は、アルが池の傍で見つけた。残りは一つ。「風の宝玉」を回収すれば良いはず。
そして、アロンという騎士団長が、キラに加えてアルもこちらの世界へと送り込んだ。
アルは、奏の後輩である氷川伊織の異次元の存在であり――
「僕と同様、剣術を嗜んでいるのですね!」
伊織が、昼間同様に目をキラキラとさせながら叫んだ。

どうやら彼、見かけによらずこういった「魔法」とか「異次元」とか……そういう不思議系のものが好きなようだ。加えて、「もう一人の自分」の登場と、そのもう一人が自分と同じ剣術の手練れと知り、テンションが一気に上がっているらしい。
そのもう一人の自分、ことアルとも、奏とは正反対で気が合うらしく、当初はアル(留学生だと思っていた)に学校の寮を進めていたにも拘らず、アルの正体が分かるや否や、自分の家に一緒に住めば良いと提案したらしい。結果、アルがキラに頼んで氷川家の人間に魔法をかけてもらったようで、ここにくる少し前に皆で氷川家に寄った際、晴れてアルも氷川家の居候となることが決まったのだった。
まあ、伊織の家は道場も開いているし、向こうの世界でやはり家が剣術道場を開いていたアルにとっても親しみやすい環境のようだ。唯一、
「キラ様! キラ様も一緒に僕と生活しましょう! そのほうが絶対にいい!」
――と、奏に舌打ちをしながらキラに嘆願しているのには苦笑いだったけれど。
実際、奏としては全然それでも構わないのだけれど、何故かキラがここが気に入っているらしく、
「心配するな、アル。私は大丈夫。奏の家は居心地もいいし、何せ母上殿と父上殿もとてもお優しいのだ」
確かに実の娘である奏よりも、すでにこの藤崎家に慣れ親しんでいるキラにとっては、別にいまさら居候先を変える事も無いのだろう。そのキラの回答にアルはあからさまに残念そうな表情を見せるも、
「おい、女!」
「奏よ。藤崎奏」
「藤崎奏、キラ様に何か失礼なことでもしたら、僕がお前を葬り去るからな!」
「はいはい」
何故、フルネーム。それに加え、この見た目超絶イケメンが何故、同性のキラに並並ならぬ愛情を注いでいるのかと、ため息が自然に口から洩れ出でる奏である。

恋愛は自由だからいいですけど。
いいですけど、この割と特殊な状況下で三角関係とかかなり厄介なので、出来れば巻き込まないでいただきたい。まあ、キラはもう一人の奏であるわけだし、奏がキラを好きだとかには絶対にならないだろうから、その点は大丈夫だと思うけど。

「……」
奏は皆にわからぬようにこっそりと、ため息をつく。そんな奏をよそに、アルが再びキラに話しかけていた。
 

 

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