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ラブストーリー

残念女子は、それでも恋を諦めない 3

   

 恋愛に対して奥手・苦手な小笠原 結愛。そんな彼女が、急きょイケメンの双子と同棲することになった!?
 三か月間の期間限定とは言っても、同棲が学校にばれたら即退学!
 ヒミツの同棲を、結愛は何とか乗り切ることが出来るのか?

 

 
インターローグ:午後四時二十三分のラブレター
 

 初めて君を見かけた時、何だか良く分からないけれど君は誰かに対して説教をしていたね。何もそんなに怒らなくても。見ているこちらがそう口を挟みたくなるような、怒り具合。相手が反論する余地も与えない猛口撃に、もはや誰も手を付けられないようだった。
 でもその翌日は、そんなこと何もなかったようにその相手と笑いながら一緒に作業をしていた君。その次の日も、またその次の日も。時々はあの日のように怒り狂って見えた日もあったけど、その翌日は綺麗さっぱり忘れている。それはある意味羨ましい。

 それからというもの、毎日毎日、色んな状況に遭遇しては、くるくるとめまぐるしく表情が変わる君。そうして、いつの間にか一年過ぎて。初めて君を見たあの日と同じ場所、同じ時刻――午後四時二十三分、僕は今日も君を見ている。

 ただ、今日の君は何だかいつもと雰囲気が違う。
 ぼんやりと窓辺の席に座って、本を見ているフリをしてため息をつく。

 何を悩んでいるのだろう。そんな君が、何だか人に言えない「何か」を抱えているような気がして僕は気が気がじゃない。

 ――ねえ、君。君には笑顔が一番似合うと思うよ。
 こうして君を眺めている僕は、今はまだ何も出来ない。でも、そうやって何かに悩む君の傍に、いつかは寄り添えるようになりたいなとは思っているんだ。
 だから――今はまだ、君が抱えているその「何か」を、少なくても他の男に相談して、そいつを頼ってなんて欲しくない。

 勝手だよね。うん、勝手なのはわかっている。でも、きっと近い内に君の傍に本当に近づけるはずだから。だからその時までは、どうか待っていて欲しい。

 そういうわけで、君への想い、今日も手紙で君に届けるよ。
 午後四時二十三分。今日も声を掛けられなかった君に、心からの愛をこめて。
 僕の大切な君に、心からの愛をこめて。
 

 

「え? あ、うん……これなんだけど」
 カナタ君の方が私の話に反応したのは意外だったけど、興味を持ってくれるのなら別にそれはどうでもいい。私は早速、自宅焼却用にと持って帰ってきたラブレターを、カバンから出して彼らに見せる。

――ラブレターを貰うようになって数か月。それは平日限定で、必ず下駄箱に入れられている。始め貰った時には、「あれ? 下駄箱間違えられた?」と思った。でも次の日も、その次の日も入れてあったから、本当に自分あてにそれが届いたんだと思うようになった。
 人生って、本当に何があるかわからない。今の高校に入って以来、恋愛事からは遠ざかっているし、明るい青春は望めないなと思っていたから、貰い始めたあたりは、そのラブレターにも浮かれていたのは事実。それにどんな人が手紙を入れているのか興味も沸いたので下駄箱を見張っていたこともあったけれど、そういう日に限って、別の場所―――例えば教室の机の中とかに手紙が入っている。
 まるで、私の行動をどこかで見張っているみたい――いつまでたっても会うことが出来ないラブレターの送り主について、いくら鈍い私でも、不思議には思っていた。
 でも今日のラブレターの内容からして、「午後四時二十三分」と書いてあったから、多分その時間に確実に届けられているらしき、そのラブレター。一見情熱的な内容なんだけど――よくよく考えると、話しかけもしてこないで平日は毎日じっと見られていると思うと、最近では恐怖に思うようになっていた。しかも最初は「好きです」「いつも応援しています」だけだったのに、何だか要求をされているような文面に最近では変わってきている。
 送り届けられる時間も細かいし、内容もちょっと気持ち悪いし、独占欲を感じさせるようなその内容は、何だか鳥肌が立つ。
 とはいえ、まだ直接その人に何かをされたわけでもないから、誰に相談することもできないでいた。とりあえず律儀に毎日届けられるラブレターを、学校で捨てるのはいつ、誰に見られているかわからないから家に帰って焼却処分。私はそれまで保管していたラブレターを一旦すべて家で焼却した。そして、それ以降もこうして、カバンに入れて持って帰ってきては家で焼却処分をしようとしたのだった。

――そんな私の話を聞きながら、カナタ君はそれを手に取りじっと見つめるも、何故か眉間にしわを寄せている。

 

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