幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season19-11

   

 多比良が愕然となっていたが、狩谷に裏切られていたことをしると怒りに我を忘れて牙をむいた。

 すべては狩谷が裏で勝手に工作し、裏切り行為をしていたことが、今回の中原暗殺にまで発展していった。

 後部警視正やマスコミへのリーク、賄賂に関する疑念を露見させたのはすべて狩谷の工作によるものだった。

 だが、中原を暗殺したさいに、まんまとトラップにかかった狩谷。中原が最後にみせた抗いともいえる。

 毒物による自殺を装うために口を開いたときに狩谷の指を噛まれた。その血液が唇に付着。そのDNA検査をしたところ、警察の犯罪歴データーベースによって過去の犯罪者に関する未解決事件の犯人が狩谷のDNAと一致したこともわかった。

 そして、それは氷室の十年前の悔やみきれない隠ぺいされたある事件とのつながりに結びつくのだった…

 

 場の空気も読まずに、多比良は怒りに満ちていた。「狩谷、きさまぁー裏切ったのか!」

 多比良の歯ぎしりの音が響くほど、怒号に震えていた。

「なにが」狩谷は冷酷な目で多比良を一瞥する。

「警察の上層部の者に賄賂の密告した手紙を送ったことだ、そんなこときいていないぞ。あの金のことは内密だといったはずだ。そういう取り引きをしていただろ、なぜだ…、裏切り行為だ。おまえがそんなことしなければ今回のような事件には発展しなかったはずだ。中原だって死ぬ必要はなかった。すべては国を造るための資金だろ、それを…」

「なぜ、俺がそんな役割を担わないとならないんだ。国を造るなんて俺には関係ない。自分の人生すら自由に生きてこれなかったんだぞ…」狩谷は怒気を含めていった。

 氷室がいった。「それはきみの両親のことが原因だね?」

 ちらっと狩谷は氷室をみた。「すべてお見通しのようだな、さすが名探偵…、あんただけはかかわりがないようにしようと思っていた。いくら綿密な計画でも俺は策略家ではない。計画のほころびをどうしても見抜かれるのではないかと冷や冷やしていたが…」

「あなたはさっきこういった。“そのすべての暗殺を俺がやったというのか”、ぼやくように…、それは父親のしてきたことを把握していると自白したのも同然」氷室がついに己の過去に踏みこむための心を固めるように息を吐いた。

「ずいぶんと綿密な計画だったと思うけど」水桐が褒めるようにいった。

「そうですか…」御影はいった。

「そう、相手が悪かった」火守がいった。「中原さんが氷室名探偵に直接依頼してきた。偶然にも警視庁の政木警部からも、同じ対象の絡む事件を二重で依頼してきた。そこからすでに計画倒れだったんだ。おまえが早く気づくべきだったんだ」

 御影は氷室に近寄り背後で合図を送る。「氷室さん、そろそろ本題へ…、ここからは氷室さんの過去の戦いの決着です」

「わかっている」氷室は見習いごときに言われるまでもなく、攻撃的に狩谷をにらんだ。「きみの両親はいま、なにをしている?」

 狩谷は目頭に皺を寄せた。「なにをいっているんだ…」

「中原の唇から微量の血痕が残っていた。噛んださいのものだろう」伯田警部補がいった。「すべては呪われた家系から逃れるためではないのか?」

「どういうことだ、呪いだと、おかしなことを」狩谷は誤魔化すような口ぶりだった。

 氷室は続けた。「警察の後部警視正に密告の手紙を送った人物は狩谷だが、また本山さんの呪縛に苦悩していたんじゃないか。これを境に手を切りたいと思っていた。本山さんが疑われれば国外逃亡となるはずだ。しかしここで誤算がおきた。知ってか知らずか政木警部の判断で、いや恐れによって本山方面本部長を疑うなどご法度、と言い続けた結果に狩谷、あなたは足止めを喰らった」

 御影が本山方面本部長室に乗りこもうとしたさいに遮られたときのことだ。

 政木警部は寝耳に水だった。刑事の感がここで働いたのだろう。もっとも出世に響く話を懸念したのが本音だが。

 狩谷は耳を貸さないようにそっぽをむいていた。

「これをみてくれ」黒川刑事が用紙をみせた。「警察のデータベースから中原の唇から採取した血痕だが、DNAから検索してみた。そしたらこんな人物があがった」

 政木警部、御影たち探偵はこの事実に蒼白した。氷室に至ってはその報告を受けて身震いしたという。

「まさか時は止まることなく影にひそみ、表の世界と平行して成長をしていたというのか…」御影はいった。

「そのようね」水桐は口を手でふさいだ。「ほんとうにおどろいた」

「氷室さんの十年前の因縁は終わってはいなかった…」

 氷室は静かに佇んでいた。これで十年前の影に光をあてることができるからだ。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
-, , , ,


コメントを残す

おすすめ作品