幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

紅蓮の翼 1

   

突如として現れた夜盗。

それはまるで一陣の風のように、鴬伽(おうか)からすべてを奪っていった。

私も、ともに。
そう、できたのならどれだけ。
それでもなお、生きて。
それが、逝った者たちの願いであるから。

生き恥をさらす。

不定期に連載致します。

こちらにて初めての一般作品でございます。
こちらに関しては、
今後、一切の性描写も色恋沙汰もありませんので、あしからず。

 

「お前だけは逃げなさい!!」

 目の前に突然人工的に作られた砂嵐と、傍若無人な盗賊に抗いながら聞いた声。
 鴬伽(おうか)は埃にまみれ襲い来る白刃をよけながらその声に視線を向ける。
 鴬伽と同様、突如現れた野蛮人に対しながら叫ぶ母の姿があった。

 鴬伽の持つ細身の長剣とは違い、短剣を手に、その細腕からは想像できないほどに鬼気迫った技を見せながら、母は徐々に鴬伽の傍により、背中合わせとなった。

「母さま?!」

 野蛮人をなぎ払いながら、鴬伽は母の言葉に驚愕する。

「首長からの命です。お前は必ず生き延びなさい」

 母はその美しい貌を砂と血で汚しながら笑い、鴬伽の手をとると厩舎へと走った。
 そこは先ほどまでの狂乱が嘘のように静まり返り、鴬伽たち商隊と共に生きる砂馬たちの寝床。

「いやです!! 私も共に……!!」

 無言で鴬伽の愛馬、疾風(はやて)に鞍をつける母に言い募る。
 しかし母は鴬伽の声に返すことはぜず、乱れた呼吸で厩舎と天幕を繋ぐ扉の前に荷を積み始めた。
 まるでこれからやってくる野蛮人という洪水を堰き止める土嚢のように。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品