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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-1

   

 氷室探偵社に脅迫状が届いた。事務員の佐伯は中をあらためた。ほかの事務員の女性たちも寄ってきて内容に困惑していた。

 小柴はいつにもまして冷静だった。待機していた雲田、森谷、川上の三名にその脅迫状の真偽を調査してもらうことにした。

 脅迫状の文面はこの探偵社を崩壊、つまりが爆破すると読み取れる。

 そして森谷の顔がどんどん険しくなっていく。事務員たち女性は顔つきからして脅迫状が嘘ではないと悟りはじめていた。

 脅迫状を送ったきたという使者が探偵社に訪れるというのだが、その使者によって探偵社は崩壊する事態になる。

 もはや止められない事態に事務員らは驚嘆するだけだった。そしてその使者とは…。

 

 氷室探偵事務所に脅迫状が届いた。

「えっ、なによこれ…」

 事務員の最年長の佐伯 みどりは驚きを隠せずにいた。

 覗きこむように、ほかの事務員全員が集まって危機感を滲ませていた。

「これって脅迫状なの?」

 事務員の斉藤サイトウ 綾香アヤカ。火守と恋人同士。

「氷室探偵社に脅迫状なんていい度胸ね、過去の依頼を受けた犯人かな?」

 事務員の佐崎ササキ 寛子ヒロコ、大地の助手。

「だとしても、こんなのはきたことないわ、本当なんじゃ…」

 科宮シナミヤ 佐知子サチコ、ベテラン事務員。水桐の助手だ。

「なんなのよ、いったい…」

 横峰ヨコミネ みなみミナミ、ベテラン事務員。川上の助手。

 小柴 ナナ子は冷ややかにその事務員の集いを見ていた。探偵事務所に就職した事務員、勤続6年目。

 だが、いつになく目の輝きは失われていた。

「ナナ子さん、どうする?」佐伯が訊ねた。

「今、氷室さんは政治家の件で留守だから、もどってくるのはまだでしょうね。雲田さんや森谷さんにそれを調べてもらいましょうか」小柴も女性たちの輪に入った。

「小柴さん、本当に冷静ね、表情ひとつ変わらない」佐崎がいった。

「これでも動揺はしてますよ、氷室さんがいない探偵社を狙ってくるとは思ってみなかった。とんだとばっちりでしょ…」

「まったくね、小柴さんもいうわねー」科宮が関心するようにいった。

「そんな悠長なことをいっているばあいではないですよ」斎藤はやはり危機感をぬぐえない。きっと火守がいないからだ。

「わたしもそう思う。これ本当だったらたいへん…」大地の助手である佐崎は斎藤よりも危機回避能力に触れているためか、感知力があがっているようだ。

「とにかく待機している探偵にお願いしましょう」小柴が指示をだした。

 森谷の助手佐伯、川上の助手横峰がそれぞれ電話をかけた。雲田には助手がいないため科宮がかけた。

 どうやら三人とも四階の部屋にいた。すぐに降りてきて事情を把握した。

 脅迫状と思われる文面を森谷が読み上げる。

「探偵社諸君、君たちはあまりにも傲慢であり、秘密を暴くことへの執着と信念、そして自己満足に浸るために他者の不幸を意ともせず貶めていくのはさぞ悦楽であろう。脳内に分泌されるアドレナリンは君たち探偵にとっては麻薬に等しいものだ。過剰なまでに病みつきになるのはいかがなものか。ここいらで少し休養をとられた方がよかろう。そのためにはまず、集いし場所を失うことからだ…、今宵、月夜の晩に使者が参る。その者が訪れたとき、そなたらの居住エリアは崩壊する。今のうちに逃げるがよい。さもなければ探偵社が墓標となろう」

 改めて静まり返った室内に、異様な雰囲気が漂いはじめていた。

 険しい顔の森谷。眉間に深い皺が刻まれていた。

「どういうことだと思います?」森谷の助手である佐伯が訊ねた。

 森谷は唸った。

 雲田はともかく、川上が静かすぎる。ひと言も発していない。いつもなら騒ぎ立てるのはまず、この男ではないか。

 事務員の女性たちは妙な空気それぞれが困惑の顔に影が差していた。

「そうか…」森谷はくぐもった声でいった。

「森谷探偵、どう思われますか?」小柴はいつになく声質が細くなっていた。

「あぁ、そうだな、これは脅迫にまちがない。内容からして、罪人を咎めるような文面だ。そして…」

 視線を流しながら目つきがきつく鋭さを増していた。

 事務員たちは森谷の口癖ともいえる“なのだよ”という語尾につく親しみと温和な風貌がないことに気づいていた。

 だからかもしれない。異様な空気は女性たちの肌をぴりぴりと棘のようなもので刺している。

「森谷さん?」助手である佐伯が声をかけた。

 

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