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ラブストーリー

残念女子は、それでも恋を諦めない5

   

恋愛に対して奥手・苦手な「残念女子」こと、小笠原 結愛。そんな彼女が、急きょイケメンの双子と同棲することになった!?
三か月間の期間限定とは言っても、同棲が学校にばれたら即退学!
ヒミツの同棲を、結愛は何とか乗り切ることが出来るのか?

 

 翌日。

「どうした、結愛。いつもにもまして顔に残念感が現れてるよ」

 いつもよりも一時間以上も早く登校した私は、教室ではなく図書室にいた。
 ここでは放課後いつも過ごしているのもあるから、いるだけで落ち着くし、この時間は利用者も少なく、ゆっくり過ごすには都合がいい。それに、この時間は私の親友の金森美紀もいる。

 美紀は私と違い、女子力も高いし既に彼氏もいる。その上勉強も出来る優等生なので、人が少ない朝の図書室で勉強すると効率がいいと、図書室のヘビーユーザーとなっていた。元々本も好きなので、美紀はいつも「将来は司書になりたいな。いやむしろ、本になってしまいたい」と口癖のように言っている。彼氏と出会ったのもこの図書室がきっかけだったようだし、「許されるならここに住みたいぐらいよ」と四割くらいは本気で私に言い出す始末だ。私たち図書委員の間では、美紀は図書室の主、と呼ぶ時さえある。そんな美紀だから、本当は私なんかより絶対に図書委員に向いているはずなんだけど、放課後は習い事をいくつかしているので、泣く泣く諦めたらしい。

 ――そんな図書室の主・美紀の勉強を邪魔しないように向かいの席で静かに本を読んでいたつもりだったけれど、自分でも気付かない内にため息を何度もついていたらしく、逆に美紀の邪魔をしていたようだ。

「いつもにもまして、は余計だよ」
「じゃあ、いつも同様」
「それも余計! もう、私がこんなに悩んでいるのに、親友のくせになんてひどいの!」
「だから、それを聞いてあげようとしているんじゃないの。ほら、話してみなさいよ。勉強の片手間に聞いてあげるわ」

 親切なのか、それともやっつけ仕事か。そこが少し気になるところだけれど、そういう言い回しや仕草が、美紀の魅力であり、私と美紀の適度な距離を保てていい。
 私は「他の人には絶対に秘密!」と前置きをしたうえで、美紀に今回のイケメン二人との同棲騒動の話をした。すると、

「ねえ、そのイケメンその一は料理も上手なんでしょ?! 今日の朝ごはんは当然?」
「うん。旅館も真っ青の完璧な朝食だった……」
「うわあ」
「しかも、味付けも完璧……私なんて、毎朝食パンとインスタントスープで済ませていたのに」
「うわあ、残念」

 そう、イケメンその一、ことカナタ君が作った朝食は「完璧」だった。
 ふっくらと炊き上がった白米に、豆腐とねぎの味噌汁。程よく焼けた鮭に、切り干し大根と油揚げ、竹輪と人参が入った箸休め。ホウレン草のお浸しまでついていた。しかも味付けも絶妙。男のであるカナタ君やヒナタ君はともかく、私でさえも朝から二杯もご飯をお替りしてこの朝食を堪能した始末だ。
 毎朝食パン、もしくは前の日に買っておいた菓子パンをモグモグとしながらインスタントスープを啜るだけだった私の朝ごはんを考えると、恥ずかしくて顔向けも出来ない。それに加え、
「カナタ、明日は洋食バージョンお願いな」
 ご飯を食べながら、ヒナタ君がそんなことをリクエストしていた。
「え、カナタ君、洋食もイケるの!?」
「だいたい一通りは。でも中華とイタリアンについてはヒナタの方が得意だ」
 ――なんとこのイケメン双子、二人合わせればかなりオールマイティなレパートリーがあるらしい。

 子供の頃から家事はよくやっていた、とは聞いているけれど、こんな風に女子――まあ残念女子ではあるけれど、女子顔負けの料理の腕前を得ているとは、天は一体この人たちに何物与えまくっているのか。
 ああ、でも朝食、美味しいなあ――。特にイケメンがわざわざ背負って持ってきてくれた白米は本当に格別よ。絶品の朝ごはんを食べながら、私はそんな気持ちに苛まれ――それで、今日はいつもより早く家を出てこうして図書室でぼやいているのだ。

 そんな私の事情を聞いた美紀は「可哀想な結愛」と(絶対に笑いをこらえながら)呟き、

「まあ、残念女子の料理の腕前はともかくとして、お父さんが帰ってくるまでの二か月間、二人と上手くやらないとね。今度紹介しなさいよ」
「それはいいけど……やっぱ、他の人にばれない方がいいよねえ。向こうだって、世間体もあるだろうし」
 私がそう答えると、

「そうじゃなくて。うちの学校、恋愛については自由だけど、在学中の同棲って校則で禁止されているんだって」
「ええ!?」
「ほら、ここ見てみなよ」
 美紀はそう言って、私が普段見ることのないこの学校の生徒手帳を開く。
 見ると――確かに、書いてある。

『在学中の、家族以外の異性との生活は禁止とする。発覚した場合は、いかなる場合も退学処分とする』

 ――こんな項目、これまで恋愛に全く縁がなかった私がチェックをしているわけもなく。

「ど、どどどどどうしよう! 私、意図せずに校則違反!? しかも退学だなんて、散々すぎるじゃない!」

 私は美紀に掴みかかるかの勢いでそう叫んだ。そして慌てて口を押さえて辺りを見回す。
 興奮しすぎてついつい大声を出してしまったけれど、この話を誰かが聞いていて先生の耳にでも入れたら、それこそ堪ったもんじゃない。幸い、今朝の図書室には私たちと司書さんしかいないようだったので事なきは得たけれど、

「とりあえず、他の人にはばれないように気をつけなよ、結愛。あんたただでさえ『残念』なことが多いんだから、恋愛関係もない同棲で退学なんて、シャレにならないわよ」
「れ、恋愛関係がないかは……」
「あるの?」
「……なくなった」
「何で過去形なのよ」
「……イケメンその一に少し気持ちが傾きかけたんだけど、ものの二分で失恋した」
「うわあ」

 確かに、美紀の言う通り「恋愛関係のない同棲」で退学なんてしゃれにならないし、何だか情けない気もする。
 どうせ同棲するなら、幸せな恋愛関係の伴う同棲で、それがバレたら――みたいなスリルを味わってから、発覚してほしい。
 とりあえずは、口の堅い信用している美紀にだけ打ち明けるだけにしよう。
 私は念のために美紀にも硬く口止めをして、大きなため息をついたのだった。

 

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