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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-3

   

 21時前のことだ。屋上で傷つき拘束されていた事務員の女性たちを救出し病院に搬送された。

 水桐探偵が雲田、森谷、川上を心配した。だが、この爆発はこの三人が元凶であると推理した。

 御影は愕然となった。三人には世話になってばかりだった。むしろ自分が成長したのは三人のおかげだ。特に森谷は氷室以上の恩師である。

 三人が氷室探偵事務所を爆破したことを信じられずにいた。

 あまりにも分の悪い氷室たち。これはもはや敗北にひとしい。御影は廃業かどうするかと氷室に問う。

 火守ですら恋人の事務員である斎藤が軽傷し気絶したままだ。だが、誰もがこのままでは終われないと思っている。

 そこで氷室は御影にいった。

“見習いは卒業だ”。

 ついに御影は探偵の称号をこんな状況下で授与された運びになった。

 

 氷室探偵社爆破を遠くで見届けていた川上、森谷、雲田。被害を見届けてから闇に溶け込むように新宿をあとにした。

「追跡はしないのか?」川上がタメ口でいった。

「そこまでは指示はきていない」森谷はじっと火の手がある探偵社を見つめていた。

「行くぞ、ここに帰ってくることはない。俺らには帰るべきところがある」雲田は冷淡に言い放った。
 
 

 言葉も出せないまま、ただただ時間が過ぎていく。小柴たちは眉間に皺を寄せ、緊張感と恐怖と焦りとこの場にいては未来はない現実から逃避することもできない状況に、涙を流して新宿の濁った空を見上げては流れ星に願いを込めてしまう。

 瞬く星は新宿のネオンの明るさが勝ってしまい自然世界の本来の夜空にカーテンが阻むように彼女たちの願いを跳ね返していた。

 小刻みの震えがきている。まぶたを閉じて現実を受け入れないようにしている。

 もう終わりだ。このまま受け入れない現実に救済はない。

「あと五分…」小柴は佐伯の腕時計に目を落とした。

 あと五分、えぇ…あと五分、いや死にたくない、とぼやくように六人の女がもらしていた。

 屋上から顔をだけ出して地上を見下ろす。身をのりだすこともできない。金網が阻み、屋上から地上に落ちることすらできない。もっとも落下したら惨たらしい姿を帰社する氷室探偵たちに目の当たりにさせる。そんな惨めな死に方と爆発によって跡形もなく飛び散る肉片、どちらがいいのか答えなどでない。口をガムテープでふさがれているために死に方の相談すらできない。

 全員の頭の中にこの言葉が浮かぶ。いや、刻まれた。“ぜったいにあいつらを許さない”。

 小柴が地上を見下ろしていた。社用車がゆっくりとビルの中へと入ってきた。おそらく地下に車を停めている。そして階段を上がってくる。氷室たちが帰ってきた。この絶妙なタイミング。雲田たちの計略は見事に的中している。

 目を見開く小柴だが声はまったくでない。唸り声がこもっているだけだ。とどくわけがない。

“だめ、こないで”。

 小柴の願いはなにひとつとどかない。眼からこぼれた涙には、はじめての絶望があふれていた。

 

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