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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

生かすも殺すも匙加減③

   

引越してきたばかりの朋子にとって、なんともしっくりこない出来事ばかり。
隣りの306号室に住む萩野夫妻の夫圭一は、妻華世子の作った料理しか食べられないと言う、ちょっと変わり者でもある。
『子供が欲しい』とこのマンションに引っ越してきた二人だったが、妊娠して喜んでばかりもいられなかった。
階段から奥さんが落ちて、流産してしまった夫婦の話や、妊娠後に無言電話や変な手紙がをポストに入れられ、ノイローゼになってしまった奥さん等…。朋子は自分の身にも起こるのではないかと不安にさいなまれる。

 

次の日の朝、朋子は、竹山夫人に紹介された産婦人科を訪れていた。
受け付けを済ますと、かんたんな問診票を記入するように言われた。
その後、尿検査の為の尿の採取をして、朋子は待合室で緊張しながら待っていた。
周りには、既にお腹の大きい女性や、2番目、3番目を産むお母さんが上の子供たちに絵本を読んであげる姿があった。

診察室のドアが開き
「谷中さん。谷中智子さん。」
と呼ばれた。
朋子は慌てて
「はい。」
と返事をすると
「こちらへどうぞ」
と看護師に促され診察室へと入って行った。

診察室に入ると、医師はカルテを眺めながら
「さあ、こちらの椅子に掛けてください。」
と言ったので、朋子は言われるがままに椅子に腰を下ろした。
朋子が椅子に座ると、医師はこちらを向いて
「おめでとうございます。2か月目に入ったところです。」
と言われた。
「本当ですか?」
朋子は夢じゃないかと思い医師に聞き返した。
「本当ですよ。食欲が無いのはつわりのせいでしょう。元気な赤ちゃんを産むためには仕方のない現象なので、これだけは我慢するほかないでしょうね。今の時期は無理して食べる必要はありませんよ。食べられそうな時に、食べられそうなものだけ食べていて問題ありませんから。」
そう言われて、朋子はホッとした。
「母子手帳は、来月に入ってからの申請で大丈夫ですので、4週間後にまたいらしてください。その前に何か異常があるときは勿論早めに来てくださいね。」
「先生、宜しくお願いします。」
「はい、宜しくお願いされましたよ。」
と、医師はおどけたように答えた。
朋子は、くすくすと笑ってしまった。
それと同時に医師も釣られて笑った。
「ただ、この時期はまだまだ赤ちゃんが安定していない時期だから無理な事は控えてくださいね。」
そう言われ、朋子は顔をほころばせ
「はい。」
と元気よく答えた。

 

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