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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第19話「小さき剣が守るもの」

   

出発に備えて剣を習ったエリザは、遠い海を眺めて、思い出を見つめ返す。

「誰かの背に隠れて、逃げてばかりはもう嫌なの。だから、強くなりたい」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

新章 第19話「小さき剣が守るもの」

 

 

***

「ねえ、姉ちゃん。本当にやるの?」

 準備運動をしながら、師匠が来るのを待つ私の傍で、キールが不安そうにそう言った。

「うん。どうして?」

 大方、彼の考えていることはわかるが。

 彼にとって、私は『お姫様』で、『女の子』。剣を手に取り戦う様など想像出来ないのだろう。

「だって、危ないし」

 予想通りの答えを聞いて、私は柔軟を続けながら話し始める。

「私ね、本当はずっと後悔していたの」
「え?」
「……剣を習わなかったこと」

 城にいた頃、私は武器を手にすることを陛下とルイスによって禁じられていたのだ。
 ルイスが陛下に隠れてジンクと手合わせをしている様子を眺めては、羨んだこともあった。だが、それでも私だけが許されず、ルイスも頑なに剣に触れさせようとしなかった。その言いつけを破り、反対を押し切ってでも習っておけばよかったと何度もそう思った。そうしていれば、彼等の隣で同じ痛みを抱えて戦えたのに、と――――。

 私はようやく、手段を得ることが出来る。大切な人を守る為の選択肢を増やすことが出来るのだ。

「誰かの背に隠れて、逃げてばかりはもう嫌なの。だから、強くなりたい」
「……姉ちゃん」

 それが、私が剣を取る覚悟だ。

ああ。もちろん強くしてやるさ。だが、全てはお前次第だってことを忘れんじゃねぇぞ
「! 師匠!」
「長! もー、遅いよ!」

 振り向くと、そこには待っていた師匠の姿。私は彼に駆け寄って笑顔を見せる。

「準備は済ませておきました!」
「ん、偉いな。ほれ、これがお前の剣だ」
「…! 私の、剣…」

 彼が私に差し出したのは、短剣よりも少し長く、装飾の施された剣だった。大切に保管されていたのか、刃には傷一つ見当たらない。

「いいんですか? もしかして、大事なものなのでは…?」
「いいのさ」
「……ありがとうございます」

 その言葉に甘えて剣を受け取る。光に反射した刃を見つめて、私は唇を噛み締めた。
 ――――この剣を誰かの血で染める日が来るのだろうか。私はその時、耐えられるだろうか。

「おいキール、何でお前までいるんだ? スウェナが探してたぞ」
「え!? 何で!?」
「自分の洗濯物を畳むように言われていなかった?」
「わ、忘れてた……ごめんね、姉ちゃん。俺戻るよ…」
「大丈夫よ。さ、行って」
「うんっ! 後でね!」
 

 

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