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家元 第四部 それぞれの決意

   

苑田でタブーだった後継者問題。

最初に動いたのは、意外にも志乃の夫、圭介だった。

娘の佳代子に「和義は踊りの真似がうまくなった。血筋だ。」と本格的に稽古をするように勧めていた。

一方、志乃は25歳になった琴乃に結婚を進めるが、「今は踊りが大事。もっとうまくなりたい」と強い決意を伝えていた。

そして、迎えた苑田流発表会。和義の初舞台に佳代子は喜んだが、最終演技となった琴乃の踊りに大変なショックを受けてしまった。
優雅でありながら、大きな動き、「苑田」の枠を超える踊りに言葉が出てこなかった。だが、それは佳代子に新たな気持ちをもたらしてしまった。

 

 
父、圭介の気持ち
 

佳代子は母との諍いから日本舞踊を辞めたとはいえ、幼い頃から馴染んだ世界だ。知り合いに会えば、

「最近お稽古に来いへんけど、どないしたん?」

必ずこう聞かれてしまう。もう自分には関係ないことだと、一切の付き合いを絶ち、母との関係も拒絶していた。

「これは佳代子のためなんよ。」

何かあると必ずこう言われる。縛り付けられるようで、この言葉が一番嫌いだった。

だが、結婚し、母になると、知らず知らずのうちに自分も同じことしていることに気が付いた。

「真紀ちゃん、あんたのためなんよ。」
「真紀ちゃんことはママが一番分っとる。」

娘の真紀子に掛ける言葉は、嘗て母が自分に掛けていたものと全く同じだった。

しかし、佳代子にも意地がある。それならば、立派な娘にしてみせる。バレエを習わせ、その送り迎えも自分で行い、誰にも干渉させなかった。

「佳代子か?」
「あ、お父さん?」

昭和40年(1965)1月下旬、父の圭介が電話を架けてきた。
母とは違い、父とは何もわだかまりはない。

「元気か?」
「うん、みんな元気よ。どないしたん?」
「お正月に言い忘れたことやけど、和義も4月から小学校、ランドセルを贈ろうと思って。」
「ありがとう。ほんまに助かる。」
 

 

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