幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-4

   

 警視庁捜査一課の政木警部は、先日逮捕した狩谷 一真の取り調べを行っていた。

 罪状は殺人だが、政木が聞き出したいのは別にあった。

 後部警視に密告の手紙を送った狩谷。なぜ送ったのか、飼い主にたてつく犬はまずいない。

 狩谷ずっと黙秘している。となるとなにか言えないことを握っている。

 そんな不毛な取り調べ室の重苦しい空間で、扉を叩く者が現れる。

 黒川が出ると、警官が一人駆けこんできた。そして凶報をしらせた。

「昨夜、氷室探偵社が爆破された…」

 政木警部は蒼白した。
 
 

 口を割らない狩谷に代わって多比良議員を事情聴取をする伯田警部補。

 そこで言葉のトラップをしてなんとか多比良から昨夜の氷室探偵社を爆破した犯人の名を割らせた。

 あまりにも驚愕だったため、伯田自身ショックだった。

 

 警視庁捜査一課の政木まさき 藍子あいこ警部は、向かいの男に熱いまなざしで睨んでいた。

 先日逮捕された狩谷かりや 一真かずま(24歳)。政治家の事務所で勤務する中原 友和を罠にかけ、その罪を背負わせたまま自殺するよう仕向けたが大物政治家の小宮山議員を刺殺しようと企てたが失敗。ボディーガードをしていた狩谷にはねのけられた。

 そのまま逃亡し、近くの公園の茂みで殺された。

 犯人が、この狩谷だった。氷室や御影がその真相を暴き、逮捕にいたった。今もっとも重要な話を政木警部はここ警視庁の取り調べ室で対面して事情を伺っている。

「あなたはだれに密告の手紙を送った?」政木は訊ねた。

 背後には伯田はくた 春道はるみち警部補と黒川くろかわ 公平こうへい刑事が腕を組み、いつになくのけ反るような態度で犯罪者を見下ろしていた。

 狩谷はスマートな体形だが肉体派である。暗殺を生業にしているために、着痩せするのかもしれない。脱げば鋼のような張り詰めた筋肉をまとっている。逮捕のさい、その武器を使うことなく御用となった。

「…」狩谷はずっと逮捕されてからはだんまりだった。

 言えないことをこの男は握っている。胸の内に秘めているのは、警察の裏の静脈である。

「たぶんダメですよ、この男…、どうせ言えるはずはない、もし言ったら殺されるのは、狩谷だ」伯田警部補が罵声を飛ばすようにいった。

 同等の立場で黒川刑事は見おろしていた。

「あなたにとってどれだけの利益になるのかしら? 黙っていればそれだけ有益なことになるの? それとも逮捕されたのち、あなたは舌を失うようにプログラムされているのかしら…」

 政木は狩谷から心の内から扉を開こうとしていた。怒号を飛ばして脅して、罵って聴取をとってもおそらく嘘を吐くだろうと思ったからだ。

 なら、どうするか。この男が自ら本音を、そして真相を語るにはどうしたらいいか、その鍵が必要なのだ。

 政木警部はまだ鍵を手にしていない。

 椅子の背もたれに身体を預けた警部は次なる一手を考えなければならない。

 取り調べ室のドアを叩く者がいる。

「だれよ」政木警部は気が散っていけなかった。

「ふんっ」鼻で笑った。狩谷が唐突に感情を表にだした。

 三人の刑事は狩谷の顔を覗く。

「なによ…」

 そのあいだに黒川刑事は扉を開いた。警官が一人やってきた。事情を耳打ちされている黒川刑事の顔が曇っていく。

 なにかがあったんだ。

「名探偵がいまどうなっているか、それを教えにきたようだ」狩谷はほくそ笑む。

「え?」政木警部は眉が寄った。

「警部!」狭い取り調べ室で黒川の声が響いた。

「うるせぇよ!」伯田が耳をふさいでいた。

「す、すみません…、でも、とんでもないことが…」

 取り調べ室特有の空気がどんどん冷え込んでいた。政木警部はゆっくりと口を開き、黒川刑事の重い口を急かすように目で煽った。

「昨夜、氷室探偵事務所が爆破されたということです」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
-, , , ,


コメントを残す

おすすめ作品

見習い探偵と呼ばないで! Season5-2

自称天才数学者の推理記録 記録1 第6話

見習い探偵と呼ばないで! Season12-3

Egg〜スパイの恋人〜episode10

プラチナ・フィンガー〜官能小説家を見つけたら〜<3>