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ロボット育児日記10

   

「なります! 父親になります!!」
 父親になることを決意した桜木霞。新米パパライフが、今始まる!!
 SFラブコメディ!!

 

 ウサ子が処分された児童ロボットの1体だとしたら……。
「この子は、どうなるんですか?」
 先程から話しているサライさんは、俺を病棟まで案内してくれたナースと違って表情が豊かだ。あのナースは、何故あそこまで無表情だったのだろうと思えるくらいにサライさんの表情が、痛々しく見える。
「ここからは桜木さんの判断になりますが、桜木さんはウサ子ちゃんの父親になるつもりはありますか?」
「もし、俺がそれを拒否したら、ウサ子はどうなるんでしょうか?」
「暫くしたら、里親を捜す事になるでしょうが、それまでは施設で生活して、里親が見つからない場合は廃棄処分になります」
「なります! 父親になります!!」
 廃棄処分……何じゃそりゃ!! 考えるより先に、俺は叫んでいた。ウサ子がびっくりして、息を飲んだ。
「わかりました。では、柏木警部には、私の方から伝えておきます。後程手続きがあり、正式に父親として認定されます」
 ここで初めて、マリラーさんが口を開いた。
「子育ては初めてですよね。退院までに、今後の事について私が指導いたしますし、退院後もご相談に乗ります。桜木さんは幸いな事に純人間ですから、助成金も優遇されます。子育てするにも生活するにも、不自由はないでしょう」
「そうですか、それはよかったです」
 俺の生活はいいのだ。惨めだけど、俺だけなら我慢は出来るから。
「あの、じゃあまたこの病棟に来てもいいんですね」
 サライさんが、答えた。
「ええ、後程IDカードをお渡しいたします。寧ろ、毎日会いに来てあげてください。桜木さんが父親としてインプットされているのもありますが、ここに来た時のウサ子ちゃん、大変だったですよ。桜木さんを求めて泣き止まないし、夜だってやっと寝たと思っても夜泣きで起きて。今朝、桜木さんに会えるって聞いて初めて泣き止んでくれた」
 そういえば、フロアで見つけたときウサ子は独りぼっちだったっけな。泣いてばっかりで、友達も出来なかったんだろうな。
「父親として何処まで出来るかはわからないですが、精一杯この子の側に居てやりたいと思います」
「そう気を張らないでくださいね」
 サライさんは、優しく笑ってくれた。
 気付けば、そろそろ夕飯の時間だ。
「ウサ子ちゃん、パパと一緒にお部屋に戻りましょう。パパもご飯のお時間ですからね、パパとはまた明日」
「いーやー!」
 相変わらずウサ子は離れないが、取り合えず俺はウサ子を抱えて部屋に運んだ。
 部屋は個室だった。酷く泣くので、防音の個室に移したそうだ。
 ぬいぐるみや玩具がある可愛らしい部屋ではあるが、がらんとしてどこか無機質に感じる。大きな窓があったので外を覗くと、流石最上階と息が漏れるくらい綺麗な夜景が広がっていた。
「ウサ子、めちゃくちゃ綺麗だよ」
 ウサ子は理解しているのか、渋顔で俺のシャツを離さない。俺がいない間、この部屋で独りぼっち。どんなに寂しかっただろうか。
「なあ、ウサ子。よく我慢したな。偉いな。俺なんかダメ人間が親父になっちゃって、ごめんな。ウサ子は可愛いから、もっと立派な奴が直ぐに貰ってくれたかもしんないのに……。けどさ、廃棄処分って聞いて、どうしても許せなくってさ。こんな俺だけど、娘としてよろしくな」
 俺はちょっと泣きそうだった。見たらウサ子は、安心したのかいつの間にか眠っていたので、今の俺の話なんか聞いてなかったと思う。ぷっと俺から笑いが漏れた。
「失礼します。お夕食お持ちしました」
 ナースが夕食を運んできたので、それをサイドテーブルに置いた。もしかしたら起きて、お腹が空いているのに何もなかったら可哀想だから。と思ったけど、ロボットだから食べなくても平気なのかな。そういえば、ロボットの空腹感を知らない事に気付いた。今度、圭介に聞いてみよう。
 俺はベッドにウサ子を寝かすと、暫くその可愛らしい寝顔を見てから、自分の部屋に戻った。
 翌朝、マリラーさんがIDカードを持って来てくれた。ウサ子の部屋とフロアの中に入れるセキュリティキーだそうだ。
「ウサ子ちゃん、待ってますよ。時間が出来たら、会いに行ってあげてくださいね」
「はい、今直ぐにでも会いに行きたいのですがリハビリの時間があるのがもどかしいです」
「そうですか」
 マリラーさんは笑った。
「あと、柏木警部に昨日の話を伝えましたら、本日にでも桜木さんの会いに行くと言っておられました。昼頃だと言っていましたので、柏木警部と話された後に来てください」
「とすると、昨日と同じくらいの時間にしか行けませんね。直ぐにでも会いに行きたいのに」
 するとマリラーさんが、意外な提案をした。
「私の方から話してみますので、今夜ウサ子ちゃんと過ごしてはどうでしょう?」
「そんな事出来るんですか?」
「ええ、多分大丈夫でしょう」
「是非、お願いします!」

 

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