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寝悪魔は良い夢を見せる(下)

   

自由自在にあらゆる夢を見せてくれる「寝悪魔」に出会った明子は、夢を通じて作中舞台の取材を行うという手法によって次々と作品を模索していく。

普通に自宅で作品を書いていたのでは決してあり得ないリアリティとディテールの細やかさが受けて新人賞を受賞したのを皮切りに、一躍人気作家として世に出ていく明子だったが……

 

 私の言葉を聞いた寝悪魔は少しほっとしたように頬を緩めてみせた。
「やあ、ありがとうございます。実はこの世界もノルマ等々色々大変でして、周囲からの視線とか避けるのが厳しかったのですよ。さて、それではいかがいたしましょうか? オリンピック選手として大活躍でしょうか、それとも今なされている小説文学賞を獲る夢でしょうか。理想の男性相手の、まさに夢のようなデート、というのもいいでしょうな」
 少し砕けた調子になった「彼」に対して、私は用意していた返事を述べた。
「どれも素敵ね。間違いなくいい思い出になるでしょうね。でも今はいいわ。おばあちゃんの書いていた妖精界か、この原稿の中にある雑踏を見て見たいのよ」
 私が傍らに積まれた原稿用紙とパソコンのモニターを相次いで指差すと、「彼」は一瞬驚いたように目をまん丸に見開き、それから大笑いを始めた。
「ど、どうしたのよ、ええと、寝悪魔さん」
「ああ、いや、失礼致しました。お嬢様、やはりあなたも生粋の作家であられるようですな。おばあ様もまったく同じことを仰っておりました。自分ではできない取材をやりたいんだ、とね。あなた様もそうなのでしょう?」
 私は無言で頷いた。小説は確かに基本、筆やタイプ機能を使って書くものだが、自分の体験や取材を活かして良くすることもできる。
 しかし、体験にも取材にも色々な限界はあるし、何よりどこに行っていようと寝ている間は新しい情報を仕入れることができないという万人共通の制約もある。
 しかし、「夢」を使って「取材」ができれば、自分ではできない行動を、動けなかったはずの時間を使ってやれるということになる。しかも無料で、何度でも行けるのだ。ここまでできて、既存の新人賞受賞者たちと私の差が縮まらないはずがない。

 

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寝悪魔は良い夢を見せる 第1話第2話

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