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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-6

   

 氷室探偵社を裏切った三人は、とある料亭に赴いていた。苛立つような足音が進む。

 襖を開くとそこには四人の男がいた。

 本山 壮一警視長の眼と合った。狩谷と通じていた、いや駒にしていた人物だ。だが、そこにはもっと強力な人物が裏にいた。

 麻田 勝計 警視監だ。狩谷の飼い主といってもいい人物だ。

 雲田らは自由を訴えるために乗りこんできた。

 氷室探偵社爆破を命じた張本人である麻田は、予期せぬ事態を言い渡される。

「誤算…」あやうく氷室名探偵までも爆死させるところだったと。

 やや喧噪する両者であるが小宮山議員が仲介した。しかし川上が政治家とは無関係のため議員に噛みつく。

 そこに四人目の男が盾になった。狩谷の代わりのボディーガードの田場という男だ。

 一触即発の状況に、麻田と本山は雲田らに次なる使命のため共闘することを命じるのだ。

 そして本山が話す、この場で集まっている理由とは…。

 

 雲田と森谷と川上は、とある料亭へと足を運んでいた。

 三人は無言だった。険しい顔は敵対する者へ殴り込みに向かうような態度だ。歩き方も板張りの廊下をガツガツと音を鳴らしていた。

 襖を開けて中にいる者を見下ろしていた。

「どういうつもりだ」雲田の口調は荒れていた。

 中にいる四人の男たちにタメ口の砲弾を撃った。

「こらこら、目上の者になんて口をきくんだ?」

 本山 壮一(もとやま そういち 50歳)警視長が温厚な態度とごきげんな顔をむけた。

 警視庁内の証拠品の現金を横流ししていた張本人。すべての罪を狩谷と多比良の二人が追うことになり、逮捕された。この男は一人逃れていた。

 なにからなにまで警察組織を擁護するための画策と暗躍が潜んでいた。

 いくら罪が暴かれたとしても、この男を逮捕することはできない。身代わりはゴキブリのように次から次へと本山のまえにつまみだされるだけだ。

“だれかが犠牲になる。そして方面本部長の代わりだって、まだまだいる。意味はわかるか?”

 同じことが起きたとき、それは同じように揉み消されるということだ。

 代用品は100円均一ショップでも充分に間に合う世の中になっている。

「その中でも最高の一品が狩谷だった。惜しいことをしました。申し訳ありません」

 本山が頭を軽く下げた。酒の席で謝罪しても笑いに変わるだけだった。

 向かいには別の男が座っていた。

 麻田 勝計(あさだ かつはる 56歳)警視監(警視庁副総監)。最大の権力者だ。白髪の膨らんだ体型は権力の証ともいえる贅の蓄えだ。

「元刑事の彼が、探偵をはじめてから犯罪を解決するプロフェッショナルとなってわれら警察の人間よりも優れているのは困りものだな、惜しむらくは今一度こちらにもどってきてくれまいか」麻田警視監は苦言を漏らす。

 雲田らは黙ってきいていた。

「そんな輩を自由にさせるわけなかろう。いつかはきっと警察の内部の事情に触れてくることになる。探られたらそれだけで終わりだということだ。あのひとはそういう頭脳を持っている」

「狩谷の父親と逮捕された息子はあなたの差し金でしょ」川上は礼儀もなにもない口のききかただった。

「あぁ、残念だ。あれほどの手練れはいない。どうにか逃がしてやりたいものだが、もう公に逮捕されてしまって、しかも証拠も出ている。氷室くんはよけいなことをしてくれたものだ」

 えげつないほどの甘辛いタレに浸かった豚肉を箸でつまみ口に運んでいた。

「狩谷を雇ったのってあなたでしょ、麻田のおじさん…」川上は呆れるような顔でいった。

「本山くんにアレを貸しただけだ。たしかにアレはわたしの所有権にある暗殺者だ…、それがどうした?」麻田はまさかの問い詰めにいらだちを露わにした。「あぁん?」

 三人は妙な迫力に気圧された。

「探偵社を爆破するよう命じたことをよくぞ実行した」本山が代わって雲田、森谷、川上を称賛した。

「我々はずっとこれまで氷室探偵社で、彼を監視するために潜入しました」雲田が反論するようにいった。「だけど、まさか爆破なんて、しかも事務員を盾にするような真似…、どうしてこんな画策を実行させたんですか?」

「しかたあるまい、タイミングを謀るとぜったいにあのときの状況しかなかった。氷室が油断するチャンスだろ」

「我々や、ほかの探偵たちはしかたがないことになっても、氷室探偵まで巻き込んでしまってはあとの祭りだ」雲田がいった。

 雲田は氷室を爆破に巻き込んでしまうタイミングを責めていた。

「なんだと!」麻田警視監は想像とちがっていたようだ。「氷室もいたのか、あの爆破のタイミングで…」

「おじさんよ、あんたはどういうつもりで俺たちに命じた? シナリオはどう書いたんだ?」川上は責め立てていた。

「麻田さん…」本山はぼそっといった。

「誤算だったな…、氷室は取り調べを受けて、ほかの者は先に帰る予定だったはずだ」

「なんですって…、それはだれに指示をだしたんですか?」本山は寝耳に水だった。

「おまえに指示していなかったか?」

「いえ…、聞いてません…」本山のばつの悪そうな顔が、その場を凍りつかせた。

 雲田たちはため息を漏らした。やるせない気持ちに思い出を穢されたような気分に落とされていた。

 

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