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ロボット育児日記11

   

 新米パパの出だしは順調で、不安ながらもウサ子との入院ライフを楽しむ桜木霞であった。
 SFラブコメディ!!

 

 柏木警部が帰ってから、いつも通りにリハビリを終わらすと、俺はマリラーさんに言われた通りお泊まり用の荷物をまとめた。と言っても、たいして持ち物もなければ、最悪取りにも戻れるのだけれど。
 リハビリを終え、軽くシャワーを浴びてから部屋を出た。何となく順路は覚えているし、ウサ子と一緒に居られる嬉しさで今日は道中疲れも感じられなかった。もしかしたら、少しスキップしてたかもしれない。そのくらい、嬉しかった。
 先にフロアを覗いた。借りたIDカードで中に入ると、ウサ子の方が先に俺を見つけて飛びついてきた。
「ウサ子、良い子にしてた?」
 ウサ子は俺の胸で怒ったように、顔をぐりぐりしてきた。
「あら、ウサ子ちゃん。良かったね、パパ来てくれて」
 サライさんが現れてウサ子に声を掛けたが、ウサ子は何故か、ぶすっとして俺の胸に顔を埋めたままだった。
「サライさん、何があったんですか?」
 サライさんは、俺に苦笑いを見せた。
「桜木さんが、ウサ子ちゃんが寝てる間に帰っちゃったから拗ねてるんですよ。さっきまで、ずっと泣いてて……もうすぐ来てくれるから、良い子で待ってようねって話して、ようやく落ち着いたんです。今夜は一緒に居てあげてくださいね。ウサ子ちゃんに限らず、まだまだ甘えたいから」
「俺もウサ子と一緒に居れるって聞いて、この時間が楽しみで仕方なかったんです。まだまだ父親って柄じゃないけど、精一杯父親になってあげたいって思います」
 拗ねるウサ子をぎゅっとした。ウサ子の小さな呼吸が感じられる。
「ウサ子ちゃん、パパにいっぱい遊んで貰ってね」
「ぱぅぱあ、あーうー」
 言葉がわからないのだが、ウサ子は俺の服をぎゅっと握りながら、後ろ向きに手を振った。何かを訴えたいような素振りに、サライさんが気付いた。
「ああ、ウサ子ちゃん。絵本を読んで欲しいのね。沢山絵本を読んであげれば、そこから言葉を覚えていくの。早く言葉が話せるようになるから。ウサ子ちゃん、きっと早く言葉を覚えて、パパとお話したいんだわ」
「へえ、そうなんですか。じゃあ、沢山読んであげたいと思います」
「ウサ子ちゃん、パパにご本がある場所、教えてあげてね」
 サライさんが言うと、ウサ子は俺の腕からぴょんと飛び降りた。俺のズボンの裾を引っ張る。
「ウサ子、行くよ」
「じゃあ、桜木さん。何かありましたら、ご遠慮なく呼んでくださいね」
 サライさんもマリラーさんも、親切で本当に良かったと思う。新米パパはこれからなのだ。
 この日、フロアが閉まるまで、俺はウサ子に沢山絵本を読んでやった。部屋に戻る時間もまだ読むようにせがむので、サライさんにお願いして数冊の絵本を部屋に持ち込む許可を貰った。
 夕飯を食べ終えて、一緒にお風呂(と言っても、時間交代制の共同浴場)に入り、ベッドの中でウサ子が寝るまで絵本を読んだ。ウサ子の寝顔は、天使そのものだった。もし、天使と言うのがこの世にいるのであれば、ウサ子は天使界のスーパーアイドルだろう。そのくらい可愛い、可愛過ぎるのだ。
 そういえば、俺の父親ってどんなんだったろう。ちゃんと仕事をしていたイメージは無いのだけど、かといって沢山遊んで貰った覚えも無い。なんというか、印象というか存在感の薄い親父だった。俺の顔はどちらかというと母親似なのだが、父親はほっそりした薄い顔立ちの大人しい人だった。だからと言って、悪い父親ではなかった。遊んで貰った覚えはなくても、一日に一冊必ず本を読んでくれた。じゃあ、父親は普段何していたのかと記憶を掘り起こして考えてみたら、そういえば家事をよくやっていた。そうか、俺の家事好きは父親譲りなのかと納得した。
 反面、母親はよく俺と遊んでくれた。冗談を言うようなお茶目で、子供と一緒に走り回るような活発な母親だった。そこは俺に遺伝しなかったのが、残念なくらい。
 そういえば、ウサ子にも母親が要るだろう。俺は独り身だし、当分恋人も出来そうにないし……まあ、明日サライさんかマリラーさんにでも相談してみよう。
 ウサ子に続いて俺も寝た。あっと言う間の一日だった。
 翌朝一番に、意外な来客があった。意外の意味が少し違うのだが、その相手は柏木警部。
「おはようございます」
「あ、驚いてるわね」
「意外だったので」
「そうでしょ、たまにはね。というか、あんたがちゃんとパパやってるのか見に来たって言いたいのだけど、私もここまで関わった幼女をちょっと見てみたくてね。サライさんから聞いて、親子の姿を見てやろうって」
「そうだったんですか。まだ、実感ないんですけど。でも、なんとかパパになりたいって思ってるんです」
 柏木警部は、にっと笑った。
「柏木警部、本当にありがとうございます。でも、何で俺にこんなによくしてくれるんですか?」
 柏木警部の表情が、少しばかり戸惑ったように見えた。彼女はちょっとの間考えるような素振りを見せ、その後軽く咳払いをした。
「そうね、警察だからかな。私も、犯人逮捕だけが警察の仕事じゃないって思ってるの」
「そうですか。それで、犯人は捕まったんですか?」

 

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