幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

残念女子は、それでも恋を諦めない7

   

恋愛に対して奥手・苦手な「残念女子」こと、小笠原 結愛。そんな彼女が、急きょイケメンの双子と同棲することになった!?
三か月間の期間限定とは言っても、同棲が学校にばれたら即退学!
ヒミツの同棲を、結愛は何とか乗り切ることが出来るのか?

 

「……ちょっと。何よ、その締まりのない顔」
「え? 何が?」
「ゴムが完全に伸びきっているスカートと同じような顔ってこと。何よ、イケメンと何かあったの?」

 カナタ君に送ってもらい登校した後。教室に行く前に図書室に寄った私は、そこで朝から勉強していた主、こと美紀に顔を見せるなりそう言われた。
 え、そんなに緩んでいるかなあ。私がカバンの中からポケットミラーを取り出して顔を見るも、

「恋愛慣れしていないと、ほんの些細な事でここまで幸せになれるのねえ」
「よ、余計なお世話よ!」
「イケメンその一には、速攻で失恋したんじゃなかったっけ? それとも相手はイケメンその二?」
「……その一」
「まあ、何ていう事でしょう」
「な、なによその、テレビ番組のパクリみたいな口調は」
「だって。諦めるのはやめたわけ? それとも略奪か。相手はあの唐沢真理子だっていうのに、残念女子は随分と大胆な行動に出たじゃないの」
「ま、真理子ちゃんとはそういう関係じゃないって、カナタ君言っていたもん」
「へえ。でもなあ……何かわざわざ説明することが逆に怪しいけど」
「え、そうなの?」
「まあでも、結愛が信じるならそれでいいんじゃない? それより、その顔、ホントにどうにかしなさいよ」

 美紀はそう言って開いていたノートを閉じると、私たちのいる机の近くで本の整理をしていた司書さんに挨拶をする。そして、未だ顔がにやけているらしい私を連れて、図書室を出る。
 うちの学校の図書室にいる司書さんは、学校の卒業者で司書資格保有者が優先的に採用されるらしく、現在ここで働いている方――ほとんど話したことがないからよくは知らないけど――もそうらしい。まだ見た目二十代半ばくらいに見えるのに、美紀曰く、歴史関係には結構詳しいらしく、質問すると丁寧に答えてくれるらしい。それに、人がいない時だったら、昨日の私と美紀みたいにちょっとくらい騒いでも多めに見てくれているとか。長い時間図書室で過ごす美紀だからこそ、こうして司書とまで上手く交流しておくなんて、抜け目がないことこの上ない。私なんて図書委員だけど、必要最低限のこと以外この司書さんとは話すこともない。たぶん話したのは――そう、二年間で通算一分、あるかないかだ。おかげで名前すら知らない状況だ。美紀に言わせれば「は? ありえないんだけど」という図書委員の私。
でも、知り合っておけば何となく得をするかもしれない。今度、何かの機会があったら私も話してみようか。うん、挨拶ぐらいは毎日しておいても損はなさそうだ。私は美紀に連れられて歩きながらそんなことを思う。
 ――って、それはいいとして。
「ねえ、美紀。さっきの話の続き。カナタ君が怪しいって? 何が怪しいの」
「何がって。だから、結愛のそういうところを利用したんじゃないかなって思ったの。あっちは恋愛の手練れっぽいし」
「そういうこと……?」
「そ。恋愛経験のないウブな結愛を信じ込ませる為に、事実じゃないことをわざわざ説明した可能性はないの? ってことよ。もしくは、嘘の中に少しだけ真実を混ぜることで会話にリアリティを出すってね。浮気とか、不倫とかする人間はそういうのが上手いらしいわよ。二股もそうだったりして」
「ちょっ……か、カナタ君はそんな人じゃないよ!」
「あんた、どれだけそのイケメンその一を知っているのよ?」
「う……」

 美紀の言葉に、私はぐっとつまる。
 そう、言われてみれば私とカナタ君が出会ってまだ、たったの三日。確かに私、カナタ君の事は大してよく知らない。今日学校に来がてら、会話を交わすついでに少しだけ彼の事を知った程度だ。
 ――真理子ちゃんが二人の幼馴染だってこと。
 ――カナタ君は中学で空手を辞めてしまった事。その理由が、「どうしても勝てない相手がいて、諦めた」という恥ずかしい理由だからあまり人に話さなかったこと。
 それと、彼が野添高校に通っていて、「まだ」特定の彼女はいない事。それくらいだ。

 でも――わざわざ嘘までついて、私を騙すようなことをする人に見えないけどなあ。
 悪いイケメンもいるかもしれないけど、彼は違う気がする。出来れば信じたい。
 ――きっとこういうのを「色眼鏡」とか「惚れた弱み」とかいうのかもしれないけど、それでもどうしても彼が悪人には思えない私は、そんなことを思っていた。すると、
「まあ、お人よしの結愛だから、すぐに誰かを信じちゃうのは心配ではあるんだけど」
「お人よし、は余計よ」
「でも、そんな結愛が信じるんだから、まあ悪い人ではないかな。しょうがない、私も信じるか。その代り、何かあったらちゃんと報告しなさいよ? 的確かつ、最適なアドバイスくらいはしてあげるから。残念女子が、あの唐沢真理子に挑むんだもんね。応援したくなるわよ」
「美紀……」
「それより、浮かれてうっかり同棲の事を他の人に話さないようにしなさいよ。ばれたら即、退学よ」
「わ、わかった」
「よろしい」
 残念女子の上に頼りない私にとって、美紀はこの上ないくらいしっかり者のいわば保護者的存在。親友がこんな子でよかった、と私は美紀に心から感謝した。
 
 

 と、その時。

 

-ラブストーリー
-, , , ,

残念女子は、それでも恋を諦めない 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話第8話

コメントを残す

おすすめ作品